Bluetooth Updatesでは、Bluetoothに関する情報を専門家がわかりやすく解説します。今回は「 多数のサポートを経験して見えてきた新認証プロセス(QPRD v3)の重要なポイント 」について紹介します。

2024年7月1日、Bluetooth SIGは10年ぶりに認証プロセスを改訂しました。アップデートの主な目的は、「 複雑な認証プロセスを簡易化する 」ことでした。このブログでは、改訂から約1年の間に、テュフ ラインランド ジャパンの3名のBQC(Bluetooth SIG認証コンサルタント)が、お客様プロジェクトのサポート経験を通じて見えてきた重要なポイントをお伝えします。
新認証プロセス(QPRD v3)とは?
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結論からお伝えしますと、改訂後の新認証プロセスは、簡易化というよりさらに複雑になっています。以下に改訂後の4つの重要なポイントを記載します。
- 認証プロセスにBluetooth SIGの審査ステップを追加
- Component Product を組み込んだときの認証
- Consistency Check(ICS設定)で発生する論理不整合 (Error) の対応
- X2Core / Profile Subsystem を組み合わせたときの認証試験
各重要なポイントについて以下にご説明します。
1.認証プロセスにBluetooth SIGの審査ステップを追加

図に示されるように、メンバーが申請した書類をBluetooth SIG が審査をして、合否判定をします。Test Report やTest Declaration の不備があると申請が拒否され、指摘事項が修正されるまで承認されません。この審査はかなり厳しく内容をチェックしている印象です。ご自身で登録作業を進められていたメンバーのお客様から「 申請が通らないのでサポートして欲しい 」というご依頼が増えてきています。また参照元の認証済デザインに不具合が見つかった場合でも元のデザイン修正から求められるケースもあります。
2.Component Product を組み込んだときの認証
新認証プロセスでは、Component Productの「 審査日から3年以内のみ有効 」という期限のルールは撤廃されました。これはメンバーにとって、古いComponent の選択肢も増えメリットでした。しかしながらComponent を組み込んで認証する場合はかなりの注意が必要です。特に複数のComponent を組み込む場合、各Component が新認証プロセスの4つの製品群 (Core Complete, Core Controller, Core Host, X2 Core) の要件に該当するLayer をすべて含まないと、認証ができないケースが発生します。また認証時に最新TCRL(認証試験要件)が適用されますが、仕様変更等によるLayer 間の論理不整合があると関連するLayer の再認証試験が求められます。古いComponentの場合、新しい機能が非対応のため認証できないケースもあります。

新認証プロセスの製品群と含まれるLayer
3.Consistency Check(ICS設定)で発生する論理不整合 (Error) の対応
新認証プロセスで認証デザインの分類が “Option 2a” あるいは “Option 2b”の場合、認証プロセスでConsistency Check (ICS設定のLayer内、相互Layer間の論理チェック機能) が必要です。Consistency Check を実施すると、ほとんどのデザインで論理不整合 (Error) が発生します。このError修正を適切に行わないとTest Plan が正しく生成されず、結果として最終審査が通らなくなります。
またLayer のICSを修正してUnlockした場合、Test Plan に記載されたすべての項目について、試験が必要です。(注意:試験項目の免除はありません)
今後、Core Spec やTCRL(認証試験要件)は年に2回アップデートされます。開発期間の長いプロジェクトやアップデートを跨ぐプロジェクトは、新しい要件で再度シミュレーションを実施して、ICS設定や試験項目に差分が発生しないかの確認が必要です。

Consistency Check (右枠にICS Errorが表示される)
4.X2Core / Profile Subsystem を組み合わせたときの認証試験
以前、認証ルール改訂!IOPT(Interoperability testing: 相互接続性試験)が必須に ~ Bluetooth Updates 9 ~ で紹介しましたが、認証済X2 Coreや Profile Subsystem を参照した設計認証を伴わない製品登録でも、IOPT試験(相互接続性試験)が必須になりました。これまでIOPT試験はBLEでは発生しませんでしたが、新認証プロセスからLegacy (Classic)、BLE どちらの場合も試験が必要になります。Consistency Check Error を適切に対応したあとに生成するTest Plan に記載される項目の試験が要求されます。
また、通常、認証済X2 Coreや Profile Subsystemは両Role サポートしているケースが多く、実際の製品で片方のRoleしか使用しないProfileでも、IOPT試験は両Role分要求されます。両Roleの試験が実施できない場合は、Role (ICS) 設定 を変更して該当Profileの再試験が必要です。
テュフ ラインランド ジャパンでは、お見積り作成前にBluetooth SIGのQualification Workspace (認証サイト)でシミュレーションを実施して、上記項目2、3、4の確認をします。これにより、1の審査ステップで拒否されるリスクはほぼ無くなります。シミュレーションはお客様の製品で採用予定のデザイン (DN: Design Number, QDID) で実施しますので、費用算出時に必ずご連絡ください。また事前シミュレーションの検討時間が必要なため、認証プロセス全体にかかる作業時間が増えています。
過去に問題なく認証・登録出来たデザインの組み合わせでも新認証プロセスではError が発生し、追加試験が必要になる場合や 「認証不可」 というケースも発生しています。特に旧認証プロセスのご経験があるメンバーのお客様は余裕をもった日程でご計画することを推奨します。
今後の認証プロセスのアップデート
Bluetooth SIG は2025年中に認証プロセスのアップデート(QPRD v4)を予定しています。主な変更内容は以下の3つになります。
1.公開日の延長:90日 => 180日
2.DN (Design Number) / QDID の誤記修正がQualification Workspace上で実施可能
3.Consistency Check で発生するエラー (ICS Error) の一部に対しWaiver (TCW) が自動化
テュフ ラインランド ジャパンでは事前検討ためのコンサルティングサービスも提供しています。認証プロセスに関してご不明な点があれば、お気軽にお問い合わせください。(開発スケジュールが未確定でもかまいません)
※2024年7月の認証プロセス改訂後、日本市場の監査が強化されています。Bluetooth SIGの幹部とのミーティングの中でその様な方針を聞いていましたが、実際にお客様から「 Bluetooth SIGから監査を受けたのでサポートして欲しい 」や「 是正措置を受けたがどのように対応すればいいのかわからない 」等のお問い合わせが急増しています。テュフ ラインランド ジャパンはこれまで多くの市場監査を受けたお客様の対応の経験があります。ご不明・ご不安なことがございましたら、まずはお気軽のお問い合わせください。
お問い合わせ:カスタマーサービス(TEL: 045-470-1850 E-Mail: info@jpn.tuv.com)
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Bluetooth が提供する最新技術を日本語でわかりやすく解説することはもちろん、試験についても詳しく紹介しています。
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更新日 : 11/12/2025




