本ブログでは、テュフ ラインランド ジャパンが提供する「太陽光発電所・蓄電所向け技術評価」に関する情報を、専門家がわかりやすく解説します。
今回は、系統用蓄電池の騒音対策に欠かせない「騒音評価、騒音シミュレーション」のサービスについてご紹介します。
蓄電所開発と騒音課題
再生可能エネルギーの導入拡大やエネルギー安全保障の観点から、バッテリーエネルギー貯蔵システム(BESS)を用いた蓄電所の開発、建設が国内外で急速に進んでいます。
BESSは太陽光発電所に比べて土地面積を抑えて設置でき、夜間や需要ピーク時への電力供給が可能になるなど、多くの利点を持ちます。
しかし、その一方で、大型蓄電池や付帯設備の稼働時には一定の騒音が発生し、住宅環境や地域社会への影響が懸念されます。こうした背景から、設置地域における騒音基準の確認や、周辺住民への配慮を含めた騒音対策は、蓄電所開発において重要な要素となっています。
蓄電所における騒音とは?
蓄電所の騒音は、主に「蓄電池ユニットやPCS(パワーコンディショナ)における冷却ファン」から発生する機器音です。これらは基本的に昼夜を問わず発生し、運転条件や設置環境によって、特に周辺環境が静かな夜間には影響が大きくなる可能性があります。発生音の目安は以下の通りです。
・蓄電池ユニット…約50〜65dB(家庭用エアコンの室外機〜通常の会話音程度)
・PCS…約45〜60dB(静かな事務所〜会話音程度)
*機器やメーカー、設置環境によって大きく異なります。
(参考)騒音に関する規制はあるのか?
日本では、環境省が定める「騒音に係る環境基準」に基づき、地域や時間帯ごとに基準値が設定されています。例えば、住居地域では昼間(6:00〜22:00)は55dB以下、夜間(22:00〜6:00)は45dB以下が一般的な目安です(参照:環境省ホームページ「騒音に係る環境基準」)。環境基準はあくまで努力目標であり、法的な拘束力はありません。
一方で、騒音規制法では、特定施設(騒音発生設備)を持つ工場や事業場に対し、自治体が定める基準の順守が義務付けられています。基準を超えて周囲に影響が出る場合、行政措置として改善勧告や改善命令が出され、場合によっては罰則が科されることもあります。(参照:環境省ホームページ 「騒音規制法の概要」)
環境基準と騒音規制法については、下記記事でより詳細に解説をしています。
蓄電所の騒音評価|BESS開発時に考慮すべき環境基準と騒音規制法の基礎知識
騒音評価のメリット
蓄電所開発は数億円〜数十億円規模の投資であり、20年以上の長期運用が前提となります。
建設後に騒音苦情が出ると、設備配置の変更や追加対策が必要になり、莫大なコストが発生します。
そのため騒音評価を行うことで、次のメリットがあります。
• 環境基準、騒音規制法の両面での基準順守を確認
• 防音壁の必要性やその規模、機器配置の最適化など対策を早期検討が可能
• 騒音の影響範囲を地図上で可視化し、地域対応や金融機関への説明に活用
テュフ ラインランド ジャパンによる第三者騒音評価
テュフ ラインランド ジャパンでは、音響シミュレーションソフトウェア「CadnaA」を用いた簡易シミュレーション、騒音評価サービスを提供しています。
蓄電所開発において、各事業者による独自評価、対策を講じている場合でも、第三者機関による客観的な評価は、住民説明での説得力向上や金融機関などレンダー向けレポートでの事業性評価にも有効です。
【騒音シミュレーションサービスの特徴】
• ISO 9613-2に準拠した騒音伝搬予測計算
• 実際の地形データを取り込んだモデル化
• 詳細なオクターブバンド騒音データが入手できない場合は、設備仕様などから想定値を採用
• 背景騒音(交通など)は割愛し、設備起因の騒音影響を明確化
「騒音評価・騒音シミュレーションサービス」に関するご相談、詳細はお問い合わせください。
環境基準と騒音規制法については、2025年8月現在における公開情報を基に執筆しています。今後、内容が変更となる場合がありますので、必ず最新情報の確認をお願いします。
環境省 - 騒音に係る環境基準について:https://www.env.go.jp/kijun/oto1-1.html
環境省 - 騒音規制法の概要:https://www.env.go.jp/air/noise/low-gaiyo.html
お問い合わせ:カスタマーサービス(TEL: 045-470-1850 E-Mail: info@jpn.tuv.com)
< 太陽光発電所・蓄電所向け技術評価解説 >
太陽光発電所・蓄電所向け技術評価解説では、太陽光発電所・蓄電所に関するテュフ ラインランド ジャパンにおける評価サービスを、専門家がわかりやすく紹介します。
・金融機関、投資機関向け発電量予測報告書 ―評価解説 vol.1―
・太陽光発電所における再調達価額評価 ―評価解説 vol.2―
・屋根置き型太陽光発電設備(産業用)における安全性評価 ―評価解説 vol.3―
・反射光評価 ―評価解説 vol.4―
・蓄電所の騒音評価|BESS開発時に考慮すべき環境基準と騒音規制法の基礎知識 ―評価解説 vol.5―
・系統用蓄電池の騒音対策|騒音評価、騒音シミュレーション ―評価解説 vol.6―
・系統用蓄電池 レンダー向け技術デューデリジェンス ―太陽光発電所・蓄電所向け技術評価解説 vol.7―
・BESS Technical Due Diligence for Lenders | Solar & ESS Project Evaluation
更新日:9/8/2025

