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蓄電所の騒音評価|BESS開発時に考慮すべき環境基準と騒音規制法の基礎知識 ―太陽光発電所・蓄電所向け技術評価解説 vol.5

Posted by TUV Rheinland Japan on 2025/08/25 9:00:00
TUV Rheinland Japan

本ブログでは、テュフ ラインランド ジャパンが提供する「太陽光発電所・蓄電所向け技術評価」に関する情報を、専門家がわかりやすく解説します。
今回は、蓄電所(BESS:Battery Energy Storage System)の開発時に重要となる騒音評価について、「環境基準と騒音規制法の基本知識」を整理します。

 

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蓄電所と騒音問題

再生可能エネルギーの普及に伴い、電力の安定供給を目的とした蓄電所(BESS)の導入が国内外で急速に進んでいます。しかし、蓄電所を構成する機器である、蓄電池ユニットやPCS(パワーコンディショナー)における冷却ファン、変圧器などは稼働に伴って一定の騒音が発生します。運転条件や設置環境によっては、騒音が周辺住民の生活に影響する可能性があり、自治体や住民が懸念する課題の一つです。

蓄電所における代表的な発生音の目安は以下の通りです:

・蓄電池ユニット…約50〜65dB(家庭用エアコンの室外機〜通常の会話音程度)

・PCS…約45〜60dB(静かな事務所〜会話音程度)

 *実際の数値は機器メーカーや設置条件により異なります。

 

環境基準と騒音規制法

蓄電所の騒音対策を検討するうえで重要となるのが、環境基準騒音規制法です。

以下は蓄電所開発における騒音に関連した「環境基準と騒音規制法の基本知識」を整理します。

 

環境基準

・環境基準とは、環境基本法に基づき環境省が制定している基準です。人の健康と生活環境の保全を目的とした政策目標を定めたものです。

・同基準にて記された内容は最低限度ではなく「望ましい状態」を示す指針であり、法的拘束力はありません。

・以下で説明する「騒音規制法」と比較して「騒音に係る環境基準」の基準値は厳しい傾向にありますが、住民合意形成や自主的な管理目標として活用されることも多い基準です。

 

騒音規制法

・騒音規制法とは、工場や事業場などから発生する騒音を規制する法律で、法的拘束力を持ちます。生活環境の保全と国民の健康保護を目的とし、法律そのものは国会によって制定されますが、環境省が所管のうえ、都道府県知事(市の区域内の地域については、市長。以下「都道府県知事等」)が条例に基づいて具体的な規制地域や基準を定め、実施、運用しています。

・同法では「特定施設(原動機の定格出力が7.5kW以上の空気圧縮機や送風機など)が設置されている工場や事業場を対象として規制基準が定められています。

・規制基準や要請限度を超える騒音により周辺の生活環境が損なわれていると判断される場合、行政措置として改善勧告や改善命令が出され、場合によっては罰則が科されることもあります。

 

項目

環境基準(目標値)

騒音規制法(法的基準)

制定主体

国(環境省)

国(環境省)+自治体条例

拘束力

なし(目標値)

あり(違反で罰則あり)

基準例(住宅地)

昼間55dB以下/夜間45dB以下

昼間50〜60dB/夜間40〜50dB(自治体により異なる)

 

蓄電所は「騒音規制法」の対象になるか?

2025年8月時点で、騒音規制法に「蓄電所」という施設区分は明記されていません。
しかし、蓄電所に設置される騒音を発する機器が「特定施設」にあたる場合、同法の適用を受ける可能性があります。

 

「特定施設」として該当する可能性のある機器

・蓄電池ユニット

・PCS(パワーコンディショナ)

・変圧器 など

適用対象となるか否かは、設置規模・設備仕様・用途地域によって判断されるため、事前に自治体の環境担当部署へ確認することが推奨されます。

 

規制対象外でも騒音評価は有効

仮に騒音規制法の直接対象外であっても、地域独自の条例や住民への説明責任の観点から、騒音評価は非常に有効です。事前評価や対策を行うことで、地域住民とのトラブル防止や信頼関係の構築につながります。

 

騒音評価とシミュレーションの活用

テュフ ラインランド ジャパンでは、音響シミュレーションソフトウェア「CadnaA」を用いた簡易シミュレーションを含む騒音評価サービスを提供しています。

蓄電所開発において、各事業者による独自評価、対策を講じている場合でも、第三者機関による客観的な評価は、住民説明での説得力向上や金融機関などレンダー向けレポートでの事業性評価にも有効です。

【騒音シミュレーションサービスの特徴】

ISO 9613-2に準拠した騒音伝搬予測計算

・実際の地形データを取り込んだモデル化

・詳細なオクターブバンド騒音データが入手できない場合は、設備仕様などから想定値を採用

・背景騒音(交通など)は割愛し、設備起因の騒音影響を明確化

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「騒音評価・騒音シミュレーションサービス」に関するご相談、詳細はお問い合わせください。

 

環境基準と騒音規制法については、2025年8月現在における公開情報を基に執筆しています。今後、内容が変更となる場合がありますので、必ず最新情報の確認をお願いします。

環境基準|環境省 https://www.env.go.jp/kijun/index.html

騒音に係る環境基準について|環境省 https://www.env.go.jp/kijun/oto1-1.html

騒音規制法の概要|環境省 https://www.env.go.jp/air/noise/low-gaiyo.html

騒音規制法パンフレット|環境省 https://www.env.go.jp/content/000190185.pdf

環境基本法|e-GOV法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/405AC0000000091

騒音規制法|e-GOV法令検索 https://laws.e-gov.go.jp/law/343AC0000000098

 

お問い合わせ:カスタマーサービス(TEL: 045-470-1850 E-Mail: info@jpn.tuv.com

 

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更新日:9/8/2025

Topics: PV, 太陽光発電