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UN-R116(UN-R161、UN-R162、UN-R163)とUN-R10の関係を理解する ~盗難防止システムに求められるのは「盗まれないこと」だけではない~ | 第3回 自動車のEMC規格

作成者: TUV Rheinland Japan|2026/10/07 7:18:34

自動車の盗難手口が高度化する中、車両には物理的なロック機構だけでなく、イモビライザ、車両警報システム、デジタルキーなど、さまざまな盗難防止機能が搭載されるようになりました。これらのシステムに関係する法規が UN-R116(および分割規則のUN-R161、UN-R162、UN-R163)です。
しかし、盗難防止装置は「盗まれなければよい」というものではありません。
もし走行中に電磁ノイズの影響でイモビライザが作動し、エンジンが停止したらどうなるでしょうか。あるいは警報システムが誤作動し続けたらどうでしょうか。

このような事態を防ぐために存在するのが、EMC(電磁両立性)法規である UN-R10 です。 

Addenda to the 1958 Agreement (Regulations 101-120) | UNECE
Addenda to the 1958 Agreement (Regulations 161-180) | UNECE
Addenda to the 1958 Agreement (Regulations 0-20) | UNECE


UN-R116はどのような法規なのか
まずはUN-R116(およびUN-R161、UN-R162、UN-R163)の全体像を見てみましょう。

R116の該当パート         対応する新国連規則 主な対象範囲と適合技術
パート I:
不正使用防止装置
UN-R161
(ロックシステム)
ステアリングロック、ギアロック、ブレーキロック等による不正自走防止
パート IV:
イモビライザ
UN-R162
(イモビライザ)
通常の操作キーなしに、燃料・点火・スターター回路を遮断・始動阻止
パート II:
車両警報システム(単体)
UN-R163
(車両警報システム)
サイレン、センサ、コントロールユニット等、部品単体(STU)としての認可
パート III:
警報システム(車両)
UN-R163
(車両警報システム)
車両全体のドア、ボンネット、荷物室の開放検出、および侵入監視要件

 

UN-R116は、不正使用防止装置、車両警報システム、イモビライザなどを対象とし、車両を盗難から守るための要求事項を規定しています。特に重要なのは、盗難を防ぐだけでなく、走行中に誤作動しないことです。例えば、走行中にイモビライザが作動してエンジンが停止したり、ステアリングロックが掛かったりすることは許されません。 そのため規則では、走行安全性を最優先にしたインターロックやフェイルセーフ設計が求められています。つまりUN-R116で求められるのは、単なる防犯性能ではなく「盗難防止機能と走行安全性の両立」です。 

なぜEMC法規UN-R10が必要なのか
盗難防止システムは電子制御化が進んでおり、さまざまな電磁ノイズ環境で使用されます。そのため、どれだけ優れた盗難防止機能を持っていても、電磁ノイズによる誤警報の発生や、意図しない解錠、走行中の誤作動といった事象が発生するようでは、安全な製品とは言えません。そこで登場するのがEMC法規であるUN-R10です。UN-R10は、放射エミッション、放射イミュニティ、伝導エミッション、伝導イミュニティなどを評価し、電磁ノイズ環境下でもシステムが正常に機能することを確認します。 

UN-R116とUN-R10はどのようにつながるのか
両者の関係を最もよく表しているのが次の考え方です。

 

盗難防止装置に求められるEMCロバスト性


● 走行中の不意の作動(誤警戒)遮断
 エンジン運転中にイモビライザやロックがノイズで誤作動し、
 燃料カットやステアリングロックを引き起こさないインターロック構造。

● 警戒状態における誤不作動(誤解錠)防止
 車外からの電磁ノイズ照射や静電気放電(ESD)を受けても、
 警戒状態のセキュリティロックが勝手に解除されない
イミュニティロバスト性。



 システムのセット状態・アンセット状態・不意の作動・誤不作動のモニターが必要
  ➡ 部品内部状態のモニターが必要となる場合有り
    ➡ 通常のシステムには存在しないモニター表示が必要

          ⇩

 システム全体を俯瞰しながらも、詳細を理解していることが重要

 

つまり、
UN-R116、161、162、163は「盗難防止機能そのものの、何を実現しなければならないか」を規定し、UN-R10は「その機能が電磁環境下でも維持されること」を証明する法規という関係になります。
今後はUN-R10の07シリーズ移行も進むため、部品メーカーや完成車メーカーにとって、EMCを単なる試験ではなく認可戦略の一部として考えることがますます重要になっていくでしょう。 

まとめ
盗難防止システムの認可では、防犯性能だけを評価しているわけではありません。走行中の安全性、誤作動防止、EMC耐性などを含めて、車両全体として安全であることが求められています。 その意味でUN-R10は単なるEMC試験ではなく、UN-R116で求められる盗難防止機能を裏付ける重要な認可エビデンスと言えます。特にUN-R10 07シリーズへの移行が進む中、今後は防犯機能とEMCを一体で考えた認可戦略がますます重要になるでしょう。

防犯機能の認可とEMC認可は別物ではなく、車両の安全性を支える両輪です。

これが、UN-R116とUN-R10の関係を理解するうえで最も重要なポイントです。

テュフ ラインランド ジャパンは、UN-R116、UN-R161、UN-R162、UN-R163、UN-R10認可やその他の活動支援をおこなっています。特に認可においては、規則の内容だけでなく、有効日や義務付け時期など複雑な要求がありますので、ご不明な点はぜひお問い合わせください。

 

網本 德茂(あみもと のりしげ)
テュフ ラインランド ジャパン株式会社
モビリティ事業部 モビリティ技術開発センター テクニカルマネージャ
1985年よりマツダ株式会社にてEMC規格(車両・部品)制定・改訂、評価運営を担当、日本自動車技術会CISPR分科会委員、自工会EMC分科会委員を歴任後、2023年より現職、車両系EMC全般を担当、2026年より日本自動車技術会CISPR分科会委員

 

お問い合わせ:カスタマーサービス(TEL:045-470-1850 E-Mail: info@jpn.tuv.com)

シリーズ「自動車のEMC規格」 
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第2回:UN-R46・UN-R158・UN-R10の関係を理解する ~「見えること」と「電磁環境でも機能すること」は別の要求である~ 
第3回:UN-R116(UN-R161、UN-R162、UN-R163)とUN-R10の関係を理解する ~盗難防止システムに求められるのは「盗まれないこと」だけではない~

更新日 : 10/7/2026