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放射イミュニティ試験の周波数拡大、放射エミッション測定にてFFT使用可、 Reverbration法の追加 | UNECE R10.07 Draft変更ポイント特集 第1回

Posted by TUV Rheinland Japan on 2023/06/15 10:04:13
TUV Rheinland Japan

このブログでは、UNECE R10.07 Draft ポイント特集として、車両エンジニア、設計者の皆様に押さえていただきたいポイントを3回にわたって掲載します。まず、第1回として、「車両エンジニア、設計者が押さえておきたい変更ポイント 「放射イミュニティ試験の周波数拡大、放射エミッション測定でのFFT使用可、 Reverbration法の追加」を掲載します。

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EMCは、もともと電子機器のラジオノイズを防ぐ目的で始まりました。近年、車両に搭載される電子機器数は増加し、電磁界の影響範囲は従来のラジオノイズにとどまらず、車両内外の電子機器まで広がり、悪影響を防ぐ必要が生じています。

UNECE R10.03は2008年に施行されましたが、施行の際にイミュニティ周波数が当時の移動体通信の使用周波数をカバーするために、1GHzから2GHzまで拡大されました。しかし、最近では、5Gを使用する移動体通信機器等が使用されることにより、2GHzまでのEMC試験では実環境で暴露される周波数範囲がカバーできていません。

さらに、車両がインターネットに常時接続され、自動運転などの実用化、ソフトウェアアップデート等により、車載の電子機器の電磁界環境下における製品安全の重要性がますます増加しています。

UN-R10は、国連法規として市民の生命、財産、安全、プライバシーを守るための最低限の法規要求です。めまぐるしく変化し進化する車両関連の電子搭載機器で使用される周波数を見据え、市民に安全な車両を提供する義務のため、法規改定が計画されています。

法規のドラフトをすべて読解し、以前との違いを確認していく作業はとても膨大な作業です。車両エンジニア、設計者が押さえておきたい変更ポイントは3つです。

ポイント1.イミュニティ試験の周波数の拡大、上限が2GHzから6GHzに変更
Increase immunity frequency upper range from 2 Ghz to 6 Ghz
理由:増加する高い周波数を使用する移動体通信機器(5G等)に対応するため、上限が拡大します。

ポイント2.CISPR 16-1-1 Narrow /Brow Band Emission測定で、FFT利用を追加  
CISPR 16-1-1 NB/BB EM FFT-based measuring 
理由:エネルギー効率の高い車両を提供する (CO2消費量削減)目的のために電気消費量を極力下げる必要があります。最近の電子機器では消費電力の低減のため、間欠作動の時間間隔が長い機器(通信間隔が長いTPMS等)が増加傾向にあります。現行の規格に沿って厳密にそれらの機器からのノイズを取りこぼしの無い確実な測定を行うと非常に測定時間が長くかかる場合があります。
測定に、FFTを利用(最新のCISPRを採用)することにより、1週間以上かかる測定時間を半日程度に短縮することが可能となります。注意点としては、FFT測定の利用が許容されるのは適合性確認の為なので、各14帯域の値の最大値を別途測定する必要があります。

ポイント3. ESA リバブレーション試験法追加 (オプショナル)
Reverberation ISO 11452-11, first edition 2010).addition 2
理由:製品に対する電磁界はあらゆる方向から暴露されます。現行の試験は一方向からの試験では、実環境を再現できていないため、あらゆる方向から暴露される試験方法が導入されました。

テュフ ラインランドは、国連法規WP29の衝突安全や自動運転に関する最新の法規動向や議論の内容を常に把握するよう努めています。モビリティ技術開発センター(MTC)では、R10 のみでなく、車両全体の法規に熟知している認証官が常駐しており、R10以外の車両法規や、車両の安全性を考慮した適切な試験プランをご提案することが可能です。
また、現行法規だけでなく、Draftの法規でも先取りして試験を行い、R10.07発行次第、申請することも対応します。特に、今後を長期に製造が決定している製品等は、今後の法規変更の影響をそのモデルライフ中に受けるため、先行して実施することをお勧めします。ぜひ、ご相談ください。

モビリティ技術開発センター(MTC)詳細はこちら

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松浦 計一(まつうら けいいち)
テュフ ラインランド ジャパン株式会社
モビリティ事業部 セクションマネージャー
2004年より型式認証の審査業務に従事。車両認証および部品認証に携わり、EMC関連法規の試験プラン、判定基準を立案。
またサイバーセキュリティ、ソフトウェアアップデート認証も担当
2017年よりテュフ ラインランド ジャパンで型式認証を担当
テュフ ラインランド グローバルのエキスパートグループメンバー

国連法規R10 : UNECE Regulation No. 10ECE R10)とは 
UNECE Regulation No. 10(ECE R10)は、 車両等の相互承認に関する国際的な「1958 年協定」に基づいて国際連合が発行したEMC国際法規です。路上で使用される車両、および車両へ取り付けが意図されたコンポーネント、セパレート・テクニカル・ユニット(STU)が、法規の対象範囲です。R10 は、多くの国際規格、エミッション規格「CISPR規格」、イミュニティ規格「ISO規格」を参照しております。

本ブログはDraftの法規を元に作成しておりますので、今後変更される可能性があります。発行された法規を確認ください。
お問い合わせ:カスタマーサービス(TEL: 045-470-1850 E-Mail: info@jpn.tuv.com


シリーズ UNECE R10.07 Draft変更ポイント特集
第1回 : 放射イミュニティ試験の周波数拡大、放射エミッション測定にてFFT使用可、 Reverbration法の追加
第2回 : 判定基準(REESS)や試験モード(AVAS、ADS、e-Call)の変更ー機能安全(ISO 26262)の追加


更新日:11/21/2023

Topics: 自動車, EMC Testing