テュフ機械安全アドバイザーの趣旨と目的
テュフ ラインランド ジャパンは、2002年よりテュフ機械安全アドバイザー/ サブアドバイザーコース(Machinery Safety Advisor (TÜV),Machinery Safety Sub-Advisor (TÜV))という安全資格認証制度を導入しています。*(旧制度名:TAA)
この制度は、安全設計に不可欠な知識を共有し、安全エンジニアの教育・育成や安全技術の普及を通じて、事故の低減と事業効率化を支援することを目的としています。
今回は、2016年にテュフ機械安全アドバイザー(旧:TAA)資格を取得された、オムロン株式会社 グローバルクオリティセンタ 品質環境マネジメントセンタ 安全環境部に所属する武田紗織様にインタビューしました。
ーーー 武田様は、現在どのような業務に携わっていらっしゃいますか。
2024年度からは現部門で、オムロンが企画・製造・販売する制御機器製品全般の製品安全対応を支援しています。具体的には、製品安全に関する社内プロセスの維持・強化、それらのプロセスに関する教育、そして製品安全規格の申請サポートなどを行っています。機械安全や安全制御機器以外の部分も含めた、オムロンの制御機器の全てに対して、広く適用できる手順やプロセス、考え方の構築や強化を行っています。

ーーー テュフ機械安全アドバイザー(旧:TAA)資格はどのようなきっかけで取得されたのでしょうか。
テュフ機械安全アドバイザー(旧:TAA)資格を取得したのは2016年です。一番のきっかけは、当時、業務変更に伴って海外の方々とのやり取りが増加してきたことでした。海外の方と機械安全に関するやり取りをする中で、自身が一定の知見をもつ者であることを相手にわかりやすく示す方法として、海外でも高い認知度と信頼性をもつテュフ ラインランドでの資格認定が有効ではないか、と考えるようになりました。これは、相手が私の専門性を検証する期間を短縮し、すぐに本質的な議論に入れるようにするためのショートカットの手段だと捉えています。
ーーー その前段として、2012年にはセーフティリードアセッサ(SLA)資格を取得されていらっしゃいますが、当時のきっかけは何だったのでしょうか。
私は元々、安全制御機器の営業担当をしていました。当時、安全制御機器担当の営業は皆がセーフティアセッサ資格を受けるという流れがあり、セーフティリードアセッサへのステップアップに対して会社の勧めがあったことが大きなきっかけです。セーフティリードアセッサ資格は日本国内で認知されていましたので、日本国内の方々との関わりにおいて、資格者であることがプラスに働く場面が多々ありました。
ーーー 資格取得のためのトレーニングや試験はいかがでしたか。
テュフ機械安全アドバイザー(旧:TAA)資格取得に必要なものと同じトレーニングや試験は、セーフティリードアセッサ資格取得の際に受けました。特に印象的だったのは、グループディスカッションを通じて模擬的に機械の安全設計や審査を体験できたことです。当時営業担当だった私にとって、機械の設計・審査に関わるお客様が安全についてどのようなポイントを重視されているか、それまで以上にお客様側の視点で深く理解することができるきっかけとなりました。
また適合性評価のプロセス、特に第三者機関の役割や概念を学べたことは、今の業務で製品認証や審査機関と関わる上でも役に立っています。
ーーー 資格取得を経て、機械安全に対する考え方に変化はありましたか。
もともとは、安全制御機器を使ってもらうための根拠を探すために機械安全の考え方を学び、活かし方を考えていました。しかし、資格取得を通じて設計・評価の視点などを得られたことで、より広い視点で機械安全をとらえられるようになりました。単に安全制御機器を使うだけではなく、機械の安全化を総合的にどう形づくり・評価するかをしっかりと考えられるようになったと感じています。思考の出発点が、「製品」から「リスクアセスメント」や「機械指令」へと変わった、と言えるかもしれません。
ーーー 取得された知識や資格を、現在の業務でどのように活用されていますか。
セーフティリードアセッサ、テュフ機械安全アドバイザーともに、資格者であることでお客様に機械安全の知見者であると認識いただき、お客様とのコミュニケーションが円滑になりました。結果として安心して業務を依頼いただくことにつながった側面があります。また自社の海外メンバーとのやり取りにおいて、テュフラインランドのネームバリューが信頼を得やすいと感じます。例えば、欧州メンバーが独自の社内安全資格制度を立ち上げた際、講習を手伝いましたが、その際に機械安全に関して専門的な話ができる人間であるとの信頼が得やすかったように思います。
また、現在関わっている様々な製品の安全性を作り込むためのプロセス強化や教育を進めていくうえでも、私の根底には、常に機械安全の考え方があります。規格や法令への理解、評価の視点は、機械安全分野以外の様々な規格・法令への対応を考える際の基礎として役立てられています。
ーーー 年に2回開催される情報交換会は、日頃の活動に役立っていますか。
はい。資格者の中にはオムロンの制御機器の直接のお客様もいらっしゃいますので、そういった安全制御機器を使用されている方とフラットに安全談義ができる貴重な機会ととらえています。また規格等の動向を包括的に網羅したインプットは、既知の認識をさらに強化することにつながっていると感じています。
ーーー 最後に、これからテュフ機械安全アドバイザーを目指す方へ、メッセージをお願いいたします。
MSAの取得はグローバルで認知度のあるテュフラインランドの名前で認定されることによって、海外の人にも機械安全の専門性を理解してもらいやすい(≒信頼していただきやすい)側面があると思います。
MSAに限らず、機械安全の専門知識をもつ人材が増えることは、安全な製造現場の実現につながり、製造業全体の安全文化醸成につながると感じています。現在、私はセーフティアセッサ資格制度のスキームオーナであるNECAで、セーフティアセッサ資格制度の拡充にも関わっております。セーフティリードアセッサはMSAと共催ということで、今後も皆様方と連携しながら安全人材の育成・強化に取り組んでいきたいと思っています。
また、規格を知ると、完全なるエンジニアリング領域だけではない部分があることも分かってきます。規格は「文章」であり、理解して活用するには読解力、論理的思考力、伝える力といったスキルも不可欠です。私自身は文系出身ですが、キャリア構築という切り口では理系文系という既存概念にとらわれず挑戦することで、範疇外にあると感じられる分野でも専門性を高めて活躍できる可能性があると、広く皆さんに知っていただければと思います。
武田様、インタビューへのご協力、ありがとうございました。
<参考リンク – テュフ ラインランド ジャパン 公式Blog>
- 産業用装置の安全規格適合をスムーズに – テュフ機械安全アドバイザー/サブアドバイザー情報交換会2025-1
- テュフ機械安全アドバイザー / サブアドバイザーコース 【2025 開催レポート】
- テュフ機械安全アドバイザー / サブアドバイザーコース 2025
- 現場での活用と最強のネットワーク構築の礎【テュフ機械安全アドバイザーインタビュー2024】
- 産業用装置の安全規格適合をスムーズに【テュフ機械安全アドバイザー情報交換会2023】
- テュフ機械安全アドバイザー(旧:TAA)資格保持者として、製品の安全性を厳しく審査。安全設計の教育にも尽力【テュフ機械安全アドバイザーインタビュー2022】
- 国際的なTAA資格の提示により、欧州はじめ海外の方々からも高い信頼を【テュフ機械安全アドバイザーインタビュー2022】
- ロールプレイをとおして第三者視点での審査を経験 - テュフ機械安全アドバイザー(旧:TAA)コース開催2021
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更新日 : 10/31/2025
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