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包装におけるMOSHとMOAH|EU|国際規制情報

Posted by TUV Rheinland Japan on 2024/05/08 19:19:46
TUV Rheinland Japan

鉱物油炭化水素のMOSH(ミネラルオイル飽和炭化水素類)とMOAH(ミネラルオイル芳香族炭化水素類)については、人体へのさまざまな悪影響が議論されています。特に3つ以上の芳香環を持つMOAH化合物については、深刻なリスクが確認されています。MOSHとMOAHは、包装材から製品に移行する可能性があります。

 


食品への鉱物油の混入の可能性は多様で、包材の生産(原材料、貯蔵、輸送)の全段階に及びます。MOSH/MOAHの主な汚染源は、接着剤、再生紙、印刷インキ、およびそれらから作られる包装材です。

欧州連合(EU)では現在、2つの国でMOSH/MOAHの使用を規制する試みがなされています。

1つめのドイツでは、リサイクル包装から食品へのMOSH/MOAH移行を制限するため、ドイツ商品条例の改正が計画されています。当初はドイツ連邦参議院によって拒否されましたが、EFSAによる更なる評価が待たれています。

2つめはフランスで、この記事で取り上げます。フランスは「循環型経済と廃棄物との闘い」に関する法律LOI n° 2020-105が施行され、包装材への印刷に関し鉱物油ベースの印刷インキの使用を禁止しました。その意図は、紙や段ボールのリサイクルの流れにMOSH/MOAHの化合物が混入される可能性を減らすことです。

フランスの Arrêté du 13 avril 2022 "Various adaptation provisions in connection with extended producer responsibility"(拡大生産者責任に関連する様々な適応規定)および包装・印刷インキ中の鉱物油禁止条件については、2022年6月の国際規制情報をご参照ください。ここでは、2023年1月1日に施行された法律の内容を詳しくご紹介しています。

フランスでは、潜在的に有害な物質の使用を制限しています。例えば、2024年12月31日まで、印刷インキ中のMOAHの割合は1%を超えてはなりません。2025年からは、芳香環が1~2個のMOSHおよびMOAH化合物には0.1%、芳香環が3個以上のMOAH化合物には0.0001%という、さらなる削減値が適用されます。

MOSH-MOAH

▰ フランスの法律 ▰

鉱物油使用禁止の対象となる物質:

  • 1~7個の芳香環を持つ芳香族鉱物油炭化水素(MOAH)
  • 炭素数16~35の飽和石油炭化水素(MOSH)

下記の鉱物油を含む印刷インキの使用が禁止が適用されます。

2024年12月31日まで:

  • 芳香環数1~7を含むMOAHについて、1%(10g/kg)を越えるもの。
2025年1月1日から:
  • 芳香環数1~7を含むMOAHにつき0.1%(1g/kg)を越えるもの
  • 芳香環数3~7を含むMOAHにつき、1ppm(1mg/kg)を超えるもの
  • 16 ~ 35 個の炭素からなるMOSHにつき、1%(1g/kg)を越えるもの

 

▰ 適用を受ける素材 ▰

この法律は、紙と段ボールの包装に使用される印刷インキ自体にのみ適用されます。その他の印刷包装、例えば印刷プラスチックフィルムやコーティング包装は、適用範囲に別途言及されていません。しかし、現行法は解釈の余地を残しています。

法律の条文によると、印刷紙・段ボールなどで提供される、取扱説明書(製品に貼付される取説)、製品識別のためのIDシール、製品に同梱される書類、保証書も包装部品として包装の一部であり、要件に従わなければならなりません。

輸出用カートンや外箱など、エンドユーザーに提供されない商業用包装については、2025年までは規制対象外です。


▰ MOSHとMOAHの判定 ▰

2022年4月13日付Arrêté第2条に規定された要求事項に確認しているかの試験は、まず初めに優先事項として印刷インキに対して実施されるのが望ましいです。限界値は印刷インキを参照しているため、インキの測定結果のみを確実に評価することができます。しかし、法律によると、印刷物でも試験することができます。

テュフ ラインランドの試験所では、包装用印刷インキに対し以下の試験が実施できます:

2024年12月31日まで有効


サンプルサイズ 10g(試験報告書にはMOSHの測定結果も記載されます。)

 

202511日より有効

サンプルサイズ 10g

※試験費用と納期はお問合せください。

 

▰ 印刷インキの試験 ▰

規制への適合性を報告・評価するために、まず液体印刷インキを試験する必要があります。印刷機から印刷インキを直接入手できない場合は、印刷物を試験することもできますが、その結果からはあまり情報が得られず、後述するように参考にはなりません。

また、印刷インキが基本的に鉱物油を含まないとしても、原材料中の不純物または製造工程に由来する少量のMOSH/MOAHがインキ中に存在する可能性もあります。

例えば、メタリック効果のある印刷物には、鉱物油を使用して粉砕された粒子が含まれている可能性があります。

 

▰ 印刷紙/板紙/段ボールに対する試験 ▰

紙、厚紙、段ボールにはリサイクル工程で発生するMOSH/MOAHが含まれる可能性があるため、試験と評価はより複雑になります。印刷紙/段ボールの試験結果に顕著な陽性の所見がある場合は、さらなる分析を実施することがフランス法律で認められています。

ミネラルオイル(鉱物油)は紙や厚紙に分散する性質があり、例えば印刷層から基材に移行したり、またその逆もあります。このことを念頭に置くと、印刷されていない紙や段ボールだけのサンプルを試験することは、フォローアップ分析として有用です。

なお、乾燥インキ層を試験する場合、乾燥工程で鉱油物が揮発してしまうため、乾燥インキの結果からから液体インキ中のMOSH/MOAH含有量に関する直接的な結論を導くことはできないことに注意します。

 

▰ 紙/板紙/段ボール紙の試験結果の評価 ▰

印刷された紙・板紙・段ボールの試験結果をできるだけ印刷インキに限定させるため、印刷インキをできるだけ多く含んだ、紙・板紙をできるだけ含まない、上層の薄い印刷層のみを試験します。得られた試験結果は、いつも印刷インキから得られたものとは明確に関連付けられるとは限りませんので、その場合は追加試験が必要になることもあります。

例:

 

▰ 適合性の実施方法について ▰

あらゆるケースを想定し、まずは契約している印刷会社に、この規制について通知することを推奨します。

印刷会社であれば、インキのテクニカル・データ・シート(TDS)に基づいて、印刷インキの製造業者と協議し、使用できる印刷インキ(2022年4月13日付Arrêté du 13 avrilに沿ったMOSH/MOAHを含まないインキ)を決定できますが、非意図的に混入した鉱物油の微量レベルの情報を得ることは事実上不可能です。

当局から問い合わせがあった場合に備え、使用されたインキの適合性を証明できるように、インキのTDSやインキ製造者の確認書のような文書を 、事前に入手しておく必要があります。適合宣言は現在要求されていませんが、将来的にはEU包装規制の一つとして、適合宣言が要求案件となることが明らかになりつつあります。

テュフ ラインランドのドイツ本社では、EU圏内の製造業者/輸入業者または販売業者に対し、印刷インキまたは印刷物について、文書を確実に入手できない場合または文書の信憑性に疑義がある場合、ランダムに確認することを推奨しています。また、鉱油物に対する規制はフランスだけでなく、EU圏内のその他の国にも今後波及する事が推測されています。

食品、化粧品など、製品を製造し、EU圏に輸出・販売される際は、テュフ ラインランドのMOSH/MOAH分析を、貴社の適合宣言のエビデンスとしてぜひご利用ください。

 

 

注)この記事は日本語の参考訳です。こちらの英語が原文です。疑問点等については原文を参照ください。

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更新日 : 5/20/2024

Topics: 国際規制情報, tuv.communication, 化学物質, 製品安全, 有害物質規制