自動車業界は、現在 大変革期の中にあると言われていますが、その最大の理由は、運転支援(ADAS)および自動運転システム(ADS)の実現のための車載ソフトウェアシステム開発にあります。ソフトウェア デファインド ビークルは、その変革を示す良い事例です。自動車の価値がソフトウェア規模に比例する状況下で、車両搭載ソフトウェアは急激な成長を続けています。本特集は、自動車のソフトウェアエンジニア向けに知らなかったでは済まされないSUMSを全部で9回に分けてお届けします。お楽しみに。
第1回目は、UN-R156適合のために不可避なSUMSについてです。
既に車載ソフトウェアの最大規模は1億行に達したと言われており、他の産業と比べても圧倒的な規模感になっています。このような大規模ソフトウェア実装の環境下では、当然のこととして頻繁かつ多様なソフトウェアアップデートが行われることになります。そのため、この中でバグの修正のみならず新規機能の追加、機能の有効化と停止を行うことができます。また、例えば、シートヒーターをソフトウェアでオン・オフするプログラムを開発し、サブスクリプションで購入することができる新規ビジネスの実現など、多様なソフトウェアアップデートの機会が想定されます。
Source: Million Lines of Code — Information is Beautiful
UNECE WP29(自動車基準調和世界フォーラム)では、このような状況を考慮してUN-R156:ソフトウェアアップデートとソフトウェアアップデート管理システム(以下SUMS)を発行しました。この規則は、型式認可に関わるすべてのソフトウェアが対象になり、自動車メーカー(以下OEM)だけでなく、サプライヤー、サービスプロバイダー、ディーラー、修理工場、さらにはドライバーまで幅広いステークホルダーを対象としています。
UN-R156は、SUMSを「ソフトウェアアップデートに関する要求に適合するための組織的プロセス、手順を定めた体系的なアプローチ」と規定しています。ソフトウェアアップデートのためのプロセス、組織固有のルール、役割責任、ツール管理などを明確にして運用管理することが要求されています。この規定は、日本を含むUN-R156に準拠を公示している国々において適合が義務化されています。今後ソフトウェアアップデートを計画する関係者は、事前に法規対象となるかどうかの判断プロセスを規定する必要があります。
UN-R156において、OEMはSUMS認証取得が義務付けられており、自動車の型式認可に影響するすべてのソフトウェアアップデートが対象となるため、広いプロセス範囲を考慮する必要があります。認証取得後も、認定書の有効期間が3年であるため、継続的にプロセス改善を行い維持することが要求されています。そのため、内部監査は継続的な改善と報告に対して重要な活動と位置づけられています。
現在日本のOEMは、SUMS認証取得をほぼ完了しています。しかし、SUMSは自動車のライフサイクル全体での対応が必要となるため、OEMにソフトウェアを提供しているサプライヤーやプロバイダー、さらに更新作業を実施するディーラーや修理工場なども対象範囲となります。SUMS認証取得はOEM以外には要求されていませんが、サプライヤーを含む他のステークホルダーもOEMと同様な運用体制を構築し、要求事項から逸脱しないよう管理する必要があります。またサプライヤーやプロバイダーなどは、OEMからSUMS監査を受けることもありその準備が必要です。皆様のSUMS認証に関する監査の準備は万全でしょうか。
第2回は「そのソフトウェア更新、UN-R156適合忘れていませんか?UN-R156の適用範囲」をお届けします。
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執筆者:本多 克三 (ほんだ かつみ) テュフ ラインランド ジャパン 株式会社 モビリティ事業部 車両安全・自律運転とコネクテッドカ― シニアエキスパート |
車両の安全、自動運転、コネクテッドのエキスパートとしてして、数々の自動車メーカーやシステムメーカーなどで適合活動に携わる。高度自動運転につながる技術支援や監査だけでなく、自動運転に関わる国連規則(UNECE)の豊富な知識と経験を活用した実務的な適合支援、監査、アセスメントを専門としている。
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更新日 :8/30/2024