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76GHz帯小電力ミリ波レーダーの空中線電力が最大1Wへ|日本電波法 - ピックアップ解説

Posted by TUV Rheinland Japan on 2026/10/19 15:31:22
TUV Rheinland Japan

総務省の報道資料から、開発・設計担当者にぜひ知っていただきたい電波法情報をピックアップし、専門家がそれぞれの要点をまとめて徹底解説します。

今回のピックアップはこちら。

総務省は2026年9月16日付の官報(号外第206号)で、76GHz帯小電力ミリ波レーダーに関する技術基準を改正する総務省告示第340号を公布しました。

出典元・参照リンク: 官報 令和8年9月16日 号外第206号・総務省告示第340号  
今回の改正により、従来10mW(0.01W)以下に制限されていた空中線電力について、等価等方輻射電力(EIRP)が50dBm以下の場合に限り、最大1Wまで認められます。これは、先進運転支援システム(ADAS)や自動運転技術の高度化を支える重要な制度変更です。

  1. 改正の背景:空中線電力の見直しが必要な理由
    76GHz帯のミリ波レーダーは、主に自動車のアダプティブクルーズコントロール(ACC)や衝突被害軽減ブレーキなどに使用されています。近年は、前方車両に加え、歩行者、自転車、交差点周辺の障害物などを、より広範囲かつ高精度に検知することが求められています。

    従来の国内技術基準では、空中線電力が10mW以下に制限されていました。

    一般に、レーダーの検知範囲を広げるためにアンテナの指向性を弱めると、アンテナ利得が低下し、長距離の検知性能を確保しにくくなります。このため、「広い範囲を検知」と「長距離の検知」を両立するには、設計上の制約がありました。

    一方、米国や欧州では、空中線電力とアンテナ利得を組み合わせたEIRPを基準とする規制が採用されています。今回の改正は、こうした技術的課題や国際的な規制動向を踏まえ、レーダー設計の自由度を高めることを目的としています。



  2. 改正内容 : 条件付きで空中線電力の上限が100倍へ拡大
    主な改正内容を以下に示します

    項目     改正前     改正後
     指定周波数   76.5GHz   変更なし 
     使用周波数帯   76.0~77.0GHz   変更なし 
     空中線電力   10mW以下   原則10mW以下。ただし、EIRPが50dBm以下の場合は1W以下 
     EIRP   空中線電力とアンテナ利得の組合せから最大50dBm相当  10mWを超える空中線電力を使用する場合、50dBm以下
     送信空中線の絶対利得   40dBi以下   変更なし 
     占有周波数帯幅の許容値  1GHz  変更なし 

    最大の変更点は、空中線電力の上限が従来の10mWから、条件付きで1Wまで拡大された点です。
    ただし、すべての76GHz帯レーダーで無条件に1Wの送信が認められたわけではありません。10mWを超える場合は、EIRPを50dBm以下に抑える必要があります。また、今回の改正は空中線電力に関するものであり、周波数や占有周波数帯幅など、ほかの技術基準が撤廃されたわけではありません。

  3. EIRPとは: 今回の改正を理解するためのポイント
    EIRP(Equivalent Isotropically Radiated Power:等価等方輻射電力)は、送信電力とアンテナ利得を考慮した、特定方向における実効的な放射電力を表す指標です。

    基本的には、以下の式で表されます。
    EIRP(dBm)= 空中線電力(dBm)+アンテナ利得(dBi)
    ※空中線電力をアンテナ入力点で定義する場合です。給電損失などがある構成では、その取扱いを考慮する必要があります。

    例えば、以下の組合せが考えられます。
    空中線電力  アンテナ利得 EIRP
     10mW(10dBm)   40dBi   50dBm 
     100mW(20dBm)   30dBi   50dBm 
     1W(30dBm)   20dBi   50dBm 


    上記はいずれもEIRPが50dBmとなる計算例です。従来は、アンテナ利得を下げても空中線電力を10mWより高く設定することはできませんでした。今回の改正により、アンテナ利得を低く設計した場合は、その分だけ空中線電力を高められます。

    これにより、アンテナの広角化による利得低下を送信電力で補い、検知距離を維持しながら視野角を拡大するなど、柔軟なレーダー設計が期待できます。
    なお、50dBmは電力換算で100Wに相当します。ただし、これはアンテナ利得を考慮した等価的な放射電力であり、送信機から実際に100Wを出力することを意味するものではありません。
     
  4. 無線認証への影響 ― メーカーが確認すべき3つのポイント

    今回の制度変更に伴い、新しい76GHz帯レーダーを開発、製造または輸入する事業者は、認証申請時に以下を確認する必要があります。

    ① 空中線電力とEIRPの両方を確認
    10mWを超える空中線電力を使用する場合、空中線電力が1W以下であることに加え、EIRPが50dBm以下であることを確認します。特に、アンテナ一体型のレーダーモジュールやアレイアンテナを使用する製品では、最大アンテナ利得や実際の放射特性を適切に把握することが重要です。
    ②    従来の技術基準も引き続き適用
    今回の改正は、76GHz帯レーダーに関するすべての規制を緩和するものではありません。周波数の許容偏差、占有周波数帯幅、不要発射の強度など、適用される技術基準への適合は引き続き必要です。
    送信電力の増加によって不要発射の測定結果などが変化する可能性もあります。開発段階から総合的な適合性評価を行うことが推奨されます。
    ③    既存の認証取得製品の設計変更に注意
    すでに技術基準適合証明または工事設計認証を取得している製品でも、今回の改正により、認証済みの工事設計を自由に変更できるわけではありません。送信電力、アンテナ構成または無線回路を変更する場合は、既存の認証範囲に収まるか確認し、必要に応じて新たな認証手続きを検討する必要があります。製品開発の初期段階から認証機関へ相談することで、設計変更や再試験による手戻りを抑えることが期待できます。

  5. 今後の展望

今回の改正により、76GHz帯レーダーの設計自由度が高まり、ADASや自動運転システムにおけるセンシング性能の向上が期待されます。また、EIRPを重視する海外の規制との整合性が高まることで、グローバル市場向けの製品の開発でも一定のメリットが見込まれます。
ただし、各国の周波数割当、技術基準、試験方法、認証制度が完全に統一されたわけではありません。海外展開に際は、仕向国ごとの規制確認が引き続き必要があります。
今回の制度改正は、単なる送信電力の緩和ではなく、次世代の車載レーダー技術を支える重要な一歩といえるでしょう。

 

テュフ ラインランドでは、無線機器の国内認証に関する技術相談、適用規格の確認、試験および認証手続きに関するサポートを提供しています。76GHz帯ミリ波レーダーをはじめとする無線機器の開発、製造または輸入を検討しているお客様は、お気軽にお問い合わせください。新しい技術基準への対応や、製品設計に応じた認証上の確認事項をご案内いたします。

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更新日 :19/10/2026

 

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