tuv-jp-blog-banner

高周波利用設備に関する規格改正の動向について(CISPR規格の国内答申案)|日本電波法 - ピックアップ解説

Posted by TUV Rheinland Japan on 2025/10/20 16:23:20
TUV Rheinland Japan

総務省の報道資料から、開発・設計担当者にぜひ知っていただきたい電波法情報をピックアップし、専門家がそれぞれの要点をまとめて徹底解説します。

今回のピックアップはこちら。

総務省は2025年10月7日発表の報道資料で、電波利用環境委員会報告(案)に対する意見募集を公示しました。

出典元・参照リンク(総務省):報道資料|電波利用環境委員会報告(案)に対する意見募集
これらは、皆様が開発・製造又は使用されている高周波利用設備の試験方法や許容値に直接関わる重要な改正案です。

  1. 改正の背景と目的
    CISPR(国際無線障害特別委員会)は、電子機器などから発生する不要電波(妨害波)の許容値と測定法を国際的に統一し、国際貿易の円滑化を目指すIEC(国際電気標準会議)の特別委員会です。日本もその運営に主要な役割を担っています。

    今回の改正の背景には、妨害波を測定する装置や技術の進歩があります。これにより、より高精度(不確かさの低減)で効率的な測定が可能になりました。また、新たな無線通信サービスが次々と開始される中で、これらを妨害波から保護する必要性が高まっています。欧米では既に最新の国際規格が採用されつつあり、日本も国際整合性を図るため、国内規格の更新を進めている状況です。


  2. 主な改正のポイント
    今回の答申案は、主に2つの柱で構成されています。
    I.    測定方法や装置そのものを定めた「基本規格」(CISPR 16シリーズ)の改正
    II.    工業・科学・医療用装置(ISM機器)に関する「製品群規格」(CISPR 11)の改正


    それぞれの重要なポイントを解説します。
    I. 基本規格(CISPR 16シリーズ)の改正案
    妨害波測定の根幹をなす規格群であり、測定の品質と効率に直結する変更が含まれています。

    •    定用受信機(CISPR 16-1-1)
        外部プリアンプ使用時の要求特性が導入され、微弱な妨害波を測定する際の精度向上が期待されます。
        校正要件が明確化され、製造業者の手順による校正も認められ、測定用受信機の信頼性維持がより確実になります。

    •    放射妨害波測定用のアンテナと試験場(CISPR 16-1-4)
        9kHz~30MHzの妨害波測定に関する試験場の検証方法が導入されます。特にワイヤレス電力伝送(WPT)などで利用される周波数帯であり、これまで評価が難しかった磁界成分の測定環境が整備されます。ラージループアンテナシステム(LLAS)などが採用される見込みです。
        1GHzを超える周波数での試験場妥当性確認の基準が明確化され、広帯域アンテナへの移行がよりスムーズになります。

    •    放射妨害波の測定法(CISPR 16-2-3)
        EUT(被試験装置)ボリュームの概念が導入されます。測定距離や周波数に応じて、測定対象となるEUTの最大サイズが定義されます。特に1GHzを超える周波数では、アンテナのビーム幅内にEUT全体を収めることが求められ、大型の装置に対する測定の再現性が向上します。

    •    測定装置に関する不確かさ(MIU)(CISPR 16-4-2)
        Δ-AN(デルタ型擬似回路網)やLLASといった新しい測定器の不確かさが考慮され、より信頼性の高い測定結果の評価が可能となります。

    II. ISM機器(CISPR 11)の改正案と国内の経過措置
    こちらは、電子レンジや高周波ウェルダーといった具体的な製品に関する規格です。国際規格への整合を図りつつも、国内事情を考慮したいくつかの経過措置(デビエーション)が設けられる点が特徴です。

    •    BS放送(11.7~12.7GHz)の保護強化
        国際規格では尖頭値許容値が緩和される方向ですが、国内ではBS放送受信への影響が懸念されています。そのため、この周波数帯で、従来の厳しい尖頭値許容値(73dBμV/m)を超えた場合は、他の測定で適合していても不合格とする案が示されています。

    •    高周波ウェルダー(40.46MHz)の許容値
        従来、特例的に緩和されていた許容値が、国際規格に合わせる形で廃止される方向です。ただし、5年間の移行期間が設けられる見込みです。

    •    電子レンジの伝導妨害波(500kHz以下)
        国内のコンセント事情(アース端子がない場合が多い)を考慮し、従来12dBの緩和が認められていましたが、これを8dBに縮小し、5年後には緩和を廃止する案となっています。

    •    工業用超音波関連装置
        これまで国内ではグループ2(意図的に電磁波を放射する機器)として扱われていましたが、国際規格に整合させ、グループ1に再整理されます。こちらも5年間の移行期間が設けられます。

    •    医療機器
        医薬品医療機器等法(薬機法)との関連もあり、新規格への移行には時間がかかるため、5年間は旧基準も併存させる案となっています。

  3. まとめ
    今回の答申案は、測定技術の進化と国際的な整合を背景とした、より合理的で精度の高い試験体系への移行を目指すものです。特に、これまで測定が難しかった低周波数帯の磁界放射や、大型装置の評価方法が具体的に示された点は、大きな進歩だと感じています。
    一方で、BS放送保護のように国内独自の厳しい要求や、一部の製品に対する経過措置も含まれており、製品開発・販売計画において注意が必要です。

テュフ ラインランド ジャパンでは、新しい規格動向をいち早く把握し、最新の測定設備と知見をもって皆様の製品開発をサポートできる体制を整えています。今回の改正に関するご質問や、今後必要となる試験に関するご相談がございましたら、どうぞお気軽にテュフ ラインランド ジャパンの担当者までお問い合わせください。

これらの改正等が公示される際は、本ブログにて、ご報告します。

テュフ ラインランド ジャパン関連サービスページ

 

お問い合わせ:カスタマーサービス(TEL:045-470-1850 E-Mail: info@jpn.tuv.com)

更新日 :20/10/2025

 

オンラインマガジンを毎月発行している説明文とメールアイコン 都会を背景にワイヤレスアイコンがつながっている PCを見ながら打ち合わせを行う女性の写真とともに、オンデマンドコンテンツの説明テキスト

 

Topics: IoT, 通信機器, tuv.communication, IT機器