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IoTを利用した電力需給の効率化― 最新の取り組みとその技術(4)

Posted by TUV Rheinland Japan on 2016/09/29 7:00:00
TUV Rheinland Japan

The article first appeared on japanindustrynews.com.
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バーチャルパワープラント -分散電源の効率活用による需給バランスの最適化

バーチャルパワープラントとは、多数の小規模な発電所や、電力の需要抑制システムを一つの発電所のようにまとめて制御を行うことをいいます。日本語で仮想発電所と呼ばれたり、また英語の頭文字を取ってVPPと呼ばれたりします。

バーチャルパワープラントは、小規模な発電施設や制御システムを、最新のIT技術によって連動させます。そのため、ひとつひとつの規模は小さくてもまとまった電力を得ることができます。大規模な発電施設を建設することと比較すると、経済的であるというメリットもあります。

また、多くの発電量を一つの大きな発電所に頼ることによるリスクを避けるため、電力の分散化が進められていますが、その分散した発電所を効率よく使うためにもバーチャルパワープラントは役立ちます。

さらに、バーチャルパワープラントは、小規模の発電施設だけではなく、電力の抑制システムも利用できます。前出のネガワットをまとめて制御するのもバーチャルパワープラントの使い方です。

電力不足については、発電所の稼働により電力を埋め合わせるのが一般的ですが、バーチャルパワープラントを活用できれば、その時間帯に電気を節約できる家庭や企業などから少しずつネガワットを回収して不足電力に充てればよいことになります。
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日本では、太陽光発電などの再生可能エネルギー、蓄電池、ヒートポンプ給湯器(エコキュート)、燃料電池(エネファーム)、電気自動車などの需要家側のエネルギーリソースが普及段階に入りつつあり、アグリゲーターがIoTを活用して、これらを最適に遠隔制御できるようにします。

 

これらの需要家側のエネルギーリソースや負荷となるエアコンや照明をつなぐ通信ネットワークは、ECHONET Liteが推奨されています。したがって、電力事業者やアグリゲーターを通じて発信されたOpenADR仕様のデマンドレスポンス信号(DR signal)を、需要家のゲートウェイ装置がECHONET Lite仕様のデマンドレスポンス・オブジェクト(DR Object)にして、宅内のエネルギーリソース機器に送られることになりそうです。

上記のようにバーチャルパワープラントを活用できれば、電力会社は一時的な電力需要を満たすための予備の発電施設を持たなくていいことになり、建設費や整備費を抑えることができます。また、VPPによって、系統電力への負担を軽減させて、再生エネルギーの導入の拡大を容易にすることによって、CO2の削減など環境への負担を軽減させ、電力の安定供給の確保を実現します。

現在、バーチャルパワープラントは、2020年に50メガワット程度の構築を目指し、実証が行われています。

 

2030年に向けた取り組み

日本政府は2030年に向けてエネルギーミックス予測を出しています。日本における電力需要は2013年に約1兆kWh (9,666億kWh) ですが、2030年の目標はこの数値とほぼ同等の9,808kWhとしています。経済成長を一年当たり17%という計算にもとづくと、約1,961億kWhの電力使用量を節約することが必要です。

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このために政府は省エネと再エネの両方から取り組むことを計画しています。省エネにおいては、ZEH (ゼロエネルギーハウス) や、ZEB (ゼロエネルギービル) などの施策とともに、デマンドレスポンス・バーチャルパワープラントが大きな役割を担っていくと考えられます。

 

Japan Industry News 2016年8月掲載記事の日本語訳です。
IoTを利用した電力需給の効率化― 最新の取り組みとその技術(1)
IoTを利用した電力需給の効率化― 最新の取り組みとその技術(2)
IoTを利用した電力需給の効率化― 最新の取り組みとその技術(3)

 

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