電気自動車(以下EV)の修理・整備には、「労働安全衛生法第59条」および「労働安全規則第36条」により、特別教育の受講が義務づけられています。日本のEV台数が年々増加するなか、EV整備等の業務に携わるには、文字通り「電気」に関する知識を持ち、EVのシステムを熟知しておく必要があります。前回のトレーニング報告記事もご参照下さい。
現在は、自動車用高電圧システム取り扱いに関する資格は存在しないようですが、EVメーカーが独自で行うEV整備のためのトレーニングや、低電圧電気取り扱いのトレーニング、自動車整備士技能検定等で十分な知識と技能を習得することができます。今後はさらに、EV用高電圧システムに特化したトレーニングや資格取得についても検討されているようです。
このような日本の現状と今後のEV普及の動向を踏まえ、テュフ ラインランド ジャパンでは、ドイツで行われている「電気自動車用高電圧システム技術資格トレーニング」を提供しています。これまでに年間約10件のトレーニングを開催してきました。去る6月、自動車に関する包括的なサービス・製品を提供するボッシュ株式会社の社員を対象に、「自動車用高電圧アプリケーション向け安全衛生トレーニング」が開催されました。本トレーニングは、DGUV(The German Statutory Accident Insurance(ドイツの法定事故保険トップ協会)) に基づいたもので、ドイツより専門講師として、高電圧自動車およびエネルギー貯蔵システムのサーベイヤー、ハインツ・J・ヤンセン氏を招聘しました。2日間にわたって講義と実技、試験を実施し、EVの仕組みをはじめ、電気災害時の応急処置やそれによる人体への影響、さらには労働安全に関する法規制や企業責任などについての講義も含まれるものです。
トレーニングの目的
- 高電圧搭載自動車・装置の安全な作業について学び、
- 高電圧システムの危険性を理解、
- リスクの回避について習得、
- 従うべきルールを知る
トレーニング内容 主に以下の内容で講義、実技が行われました。
- 電気工学の基礎
- HEV,FCEV, Battery EVについて 構造・高電圧関連の部品について
- 電気災害について:労働安全の観点から、電流による物理的な災害について、人体への影響について
- 応急処置について(基礎および具体的な対応について)
- 直接的、間接的な接触からの保護方法
- 労働安全に関する企業の責任、リスクアセスメント、法的根拠、職場における安全衛生の仕組み
- 実技:高電圧システム・部品搭載の自動車を使った講習
環境にやさしく機能面でも優秀で利点が多いEVですが、あらゆる種類のEVが開発され、取り扱いにはさらなる知識が必要とされるでしょう。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは、EVの活用が期待されています。設計や開発を担当される方、整備や修理をされる方は、正しい知識と取扱い方法を熟知し、安全を確保して作業を行うことが望ましいです。
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