2024年8月、CPSC(米国消費者製品安全委員会)は規則案(Proposed Rule)16 CFR Parts 1112 and 1250を連邦官報(Federal Register)に掲載しました。連邦官報はEUでいうところの欧州連合官報(OJEU)に相当しますが、この規則案により、ボタン電池および/またはコイン電池を含む玩具に対し、安全要求事項が追加されました。
もとより、CPSCは、玩具のボタン電池またはコイン電池に適用される規格ASTM F963-23よりも、一般消費者製品に適用される規格UL 4200Aの要求のほうが厳しいと見ており、また、電池収納部のねじの強度に対する要求も、規格IEC 62115のほうが厳しいと見ていました。さらに、UL 4200AやIEC 62368-1:2013 4.5で規定されている前処理の要件がASTM F963-23にはありません。
ボタン電池やコイン電池の飲み込みは重大な危険があるため、CPSCは対策を講じることにしました。
法案では、法改正の背景と危険が説明され、NEISSデータベース(National Electronic Injury Surveillance System)の事故データ分析も記載されています。
法案作成のため、パブリックコメントが2024年10月まで募集されましたが、2024年12月5日現在、CPSCはコメントを最終規則に落とし込むための確認をしています。最終規則が連邦官報に掲載されてから180日経過後、当該規則は発効される予定ですが、具体的な日程についての情報はまだ配信されていません。
新たな安全要求
現在の規格ASTM F963-23に、玩具においては全く新しいものとなる機械試験と、包装・製品や使用説明書に関する表示要件に関する下記の点を追加することが計画されています。
■■■ 機械的要求
- バッテリー・コンパートメントを開けた状態で、ネジ引張試験を20Nで行う。
- バッテリー交換が出来る玩具の場合、バッテリー収納部のネジは少なくとも2回転させないと開かない。
- ASTM F963の8.31項による試験を新たに含める。
- 70℃、7時間での通常前処理
- バッテリー交換によるストレスのシミュレーション:10サイクル
- 落下試験:落下の高さは、対象年齢と玩具の重量により異なる。91cmから137cmの高さから3~10回落下を繰り返す。
- ASTM F963-23の8.7.2.1項による傾斜試験
- 試験サンプルに2Jの力を掛ける、質量0.5kgの鋼球を用いた衝撃試験
- 330Nの力による破砕試験
- ASTM F963-23 8.8、8.9、8.10 項に準拠したトルク試験、引張試験、および該当する場合は圧縮試験
- IEC 61032に基づき50Nの力が適用される新しい試験プローブを使用した拡張圧縮試験
■■■ 16 CFR 1263.3 に従った包装表示および製品表示の要求
- 表示は、UL 4200Aの要件を満たすこと
- 要求された各表示については、耐久性を確認すること
包材への表示 7B
- 警告ラベルは、包装の主要な表示パネルに貼付し、表 7A.1 のサイズ仕様に適合すること。
- 設計は、UL 4200A の 7B.1 または 7B.2 に準拠すること。
- 包装が小さい場合、例外や簡略化された表示方法となる。
製品への表示 7C
- 警告は、UL 4200Aであらかじめ定義された製品表示パネルに表示すること。バッテリー交換の可否により製品表示パネルとして設定される表面が決まる。
- 設計は、UL 4200A の 7C.1 に準拠すること。
- 小さな製品には簡略化された表示方法がある。
- 表示が出来ないほどの非常に小さな製品の場合、包材に表示をすること。
■■■ 16 CFR 1263.3 に沿った表示:一般指示
- 図7B.1または7B.2に従い警告表示を使用説明書に記載すること。
- UL 4200A セクション 9.1、9.2、9.3 に従い、追加安全指示を含めること。バッテリーの種類、非充電式のバッテリーには充電しないこと、使用済みバッテリーは使用後も健康被害をもたらすことなどの情報を含む。
リコール情報
2011年1月1日から2024年3月19日までの間、CPSCのOffice of Compliance and Field Operations部は、ボタン電池またはコイン電池を含む玩具6点のリコールを実施しました。
連邦官報(Federal Register)のPublished Document: 2024-17472 (89 FR 65791)に掲載された表1にリコールに関する報道発表日、会社名、ハザード、リコール数、報告事故およびケガの件数、報道発表数について纏められています。
損傷について
NEISS (National Electronic Injury Surveillance System)のデータによると、2016 年から 2022 年までの7年間、玩具のボタン電池またはコイン電池に接触し米国の救急外来を訪れたのは 4,500件数、その多くが子供であることが推定されています。また、被害者の 81% がボタン電池やコイン型電池を飲み込んだり、口の中に入れたりしことが推定されています。
対象となる玩具の例
電池付きガチャポン、おもちゃの時計、バッテリー駆動のフィギュアや人形、電池付きレンガなど
テュフ ラインランド 香港の試験所におけるサービスについて
テュフ ラインランド 香港の試験所は、16 CFR 1250(玩具安全)および 16 CFR 1263.3(ボタン電池またはコイン電池を含む消費者製品に対する要求)の試験実施に対し、CPSCから認可された試験所です。
16 CFR 1263.3は、ボタン電池またはコイン電池を含む全ての消費者向け製品(例:腕時計、音楽プレーヤー、リモコン、グリーティングカード、エアタグ、など)に適用されますが、リース法(Reese's Law)により、16 CFR 1250で電池へのアクセスおよび表示要件に適合している14歳未満向けの玩具は除外されます。
試験や警告ラベルに対する要求事項は、現行の§1250.2で規定されたASTM F962-23よりも厳しいため、ボタン電池やコイン電池を内蔵する製品の製造業者は、この新しい規則への準拠を早めにご検討頂くことをお薦めします。
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更新日 : 12/10/2024