[ 公式 ] テュフ ラインランド ジャパンのブログ

UN-R144とUN-R10の関係を理解する ~eCall(AECS)認可におけるEMCの重要性~ | 第1回 自動車のEMC規格

作成者: TUV Rheinland Japan|2026/09/02 5:16:31

近年、車両の事故緊急通報システム(AECS、いわゆるeCall)の搭載が進む中、UN規則である「UN-R144」と「UN-R10」の理解は欠かせなくなっています。ここでは、両規則の共通点と相違点、そして認可取得における実務上のポイントを解説します。

REFERENCE: Addenda to the 1958 Agreement (Regulations 141-160) | UNECE
REFERENCE: Addenda to the 1958 Agreement (Regulations 0-20) | UNECE

UN-R144は、事故発生時に緊急通報を実施するAECSの機能要件を規定する法規です。対象はAECC(構成部品)、AECD(装置)、AECS(車両システム)であり、それぞれに対応した認可ルート(Partab)が用意されています。特にGNSSによる位置測位、通信機能、バックアップ電源、耐衝撃性能などが重要な認可項目です。

UN-R144
主な技術要件(概要)
開発体制、サプライチェーン、市場戦略に基づき、最適な経路を選択する

ポジショニング性能

Annex 10

・GNSS 互換性:GLONASS、Galileo、GPS + SBAS
・水平誤差:15 m未満(開けた場所)<40 m(アーバンキャニオン)
・TTFF(コールドスタート):60秒以下(@-130 dBm)
・再測位:≤20 s(60 sのブロック後)
・感度(追跡時):600 s(@-155 dBm)

耐衝撃試験

Annex 9

・試験方法:スレッド試験
・ΔV:70 km/h
・最大加速度:65~77 G
・パルス時間:約60 ms

電源、オーディオなど

・バックアップ電源:5分(通話)→ 60分(待機)→ 5分(通話)
・音質:衝突前 ITU-T P.1140(TCLw ≥ 46 dB)/衝突後 主観試験
・HMI 制御:マルチタスクディスプレイでの手動トリガー操作は 2 アクション以下
・MSD項目:10
・EMC:UN-R10に準拠

 

セミナー資料1:Toshihide Yoshida 2026, R144_regulation_outline.  TUV Rheinland Japan Ltd.

一方、UN-R10は車両および電子部品(ESA)のEMC要求を規定する法規です。放射エミッション、放射イミュニティ、伝導エミッション、伝導イミュニティなどを評価し、電磁ノイズ環境下でも「イミュニティ関連機能」が正常に動作することを証明します。AECSもその対象機能に含まれ、EMC試験結果が認可取得に直結します。

両規則の最大のポイントは、「UN-R144が機能要求を定義し、その機能が電磁環境下でも維持されることをUN-R10で証明する」という関係にあります。例えばEMC試験でGNSS受信や携帯通信機能が停止すると、MSD(最小データセット)の送信に失敗し、結果としてUN-R144の要求も満足できません。つまり、R10不合格は最終的にR144不合格につながる可能性があります。

 

UN-R144とUN-R10の関係

部品認可視点

AECC開発

UN-R10試験

EMC適合

UN-R144認可

 

製造業者にとって重要なのは、単にEMC試験に合格することではなく、「その試験結果がどのUN-R144要求を保証しているのか」を説明できることです。特にGNSS性能、自己診断機能、通信機能の維持は認可取得の鍵となります。今後AECS関連製品の開発や認可を進める際は、UN-R144とUN-R10を別々の規則としてではなく、一連の認可活動として捉えることが重要と言えるでしょう。

テュフ ラインランド ジャパンでは、UN-R144/UN-R10認可やその他の活動支援を提供しております。特に認可においては、規則の内容だけでなく、有効日や義務付け時期など複雑な要求がありますので、お問い合わせください。 

 

網本 德茂(あみもと のりしげ)
テュフ ラインランド ジャパン株式会社
モビリティ事業部 モビリティ技術開発センター テクニカルマネージャ
1985年よりマツダ株式会社にてEMC規格(車両・部品)制定・改訂、評価運営を担当、日本自動車技術会CISPR分科会委員、自工会EMC分科会委員を歴任後、2023年より現職、車両系EMC全般を担当、2026年より日本自動車技術会CISPR分科会委員

 

お問い合わせ:カスタマーサービス(TEL:045-470-1850 E-Mail: info@jpn.tuv.com)


更新日 : 9/2/2026

シリーズ「自動車のEMC規格」 
第1回:UN-R144とUN-R10の関係を理解する ~eCall(AECS)認可におけるEMCの重要性~