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石油・ガス産業の動向と資源開発

Posted by TUV Rheinland Japan on 2016/04/20 10:30:00
TUV Rheinland Japan

< http://www.tuv-e3.com/oil-gas/more-about/detail/item/2015/10/05/oil-gas-trends-and-developments.html からの日本語訳です。 >

石油・ガス産業は現在変革期にあり、これまでの原則がゆらいできました。産業全体がこの新しい動きに対し、柔軟かつ迅速に対応することが求められるようになっています。新しい形態での石油・ガス取引が行われるようになり、OPEC(石油輸出国機構)の役割が変化しています。また、液化天然ガス (LNG)価格が下落し、新規プロジェクトの採算性が危うくなっています。さらにプロジェクトの複雑化にともない、最新の技術が投入されることになり、技術リスクや投資リスクも増大してきています。

石油の需給状況

米国が、石油の自給自足国として台頭してきました。米国の石油自給率は、2005年の70%から今や90%まで上昇。米国が最大市場ではなくなり、大手石油会社は新しい買い手の開拓に懸命となっています。しかし、世界の石油需要の中心地も変化しています。長期的には、中国、西欧、米国が石油需要の中心となると予想されていましたが、いずれの国あるいは地域でも石油需要は低下または停滞しています。こうした傾向が続けば、世界の石油輸入国は大幅な利益を享受することになります。ある調査によれば、2010年から2020年にかけてアジア太平洋地域が世界の石油需要のおよそ70%を占めると報告されています。

 

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天然ガス取引の状況も今後数年間で変化する可能性があります。米国のシェールガス革命によって、天然ガス価格が下落し、米国は世界最大の天然ガス産出国となりました。これにより、米国は、政治的に大きな自由を手にしました。米国以外の多くの国が、環境保護の立場からシェール革命に抵抗感を示しています。しかし、将来において極度のエネルギー不足や、経済成長あるいは国家の独立性に深刻な影響を与えるような問題が発生した場合、各国の立場は変わる可能性があります。

OPECの苦闘

世界の石油取引形態が新しく変化するなか、OPECは自立戦略として新しい買い手を探し求め、西欧でのシェア拡大を図っています。サウジアラビア、クウェート、カタール、アラブ首長国連邦などOPEC加盟国の中核諸国は、石油生産量の増加あるいは少なくとも石油生産を維持するだけの余力を持っています。これら諸国は、湾岸協力会議(GCC)の加盟国でもあり、今後数年間はOPECを代表する存在であり続けると思われます。 

主導権はLNGの買い手へ

天然ガス価格が様々な理由から下落しており、LNG業界で一般的であった長期契約における価格下げ圧力が高まっています。天然ガス価格の下落の原因として、北アジアの暖冬、日本の原子力と石炭への回帰、欧州における金融危機の二次的影響などをあげることができます。さらに、世界的な過剰供給が売り手の価格交渉力を弱めています。したがって、現在、買い手は契約における仕向地条項の柔軟な対応あるいは価格見直し条項など、取引条件に柔軟性を持たせるように求める傾向にあります。


キャッシュフローを安定させるための長期契約はもはや必要とされず、買い手は長期契約の締結には消極的です。現物取引が増加しており、消費国は新しい契約を現物指数にリンクするさまざまな方法を手にしています。

革新とニッチ

新技術のおかげで、深海探査、浮遊式LNG(FLNG)設備の建設、北極における未開拓地域の探索など、以前は利用できなかったエネルギー鉱床の開発が可能となりました。石油・ガス産業とこれら産業の各種プロジェクト向けのサービスは、技術的リスクがあり、工期の遅延などにより費用が高額となる傾向があります。

複雑なプロジェクトに伴う問題を回避するため、企業は、事前プロジェクト計画の組み込み、高度な解析方法の利用、統合プロジェクト推進法(IPD)、プロジェクトのスリム化、モジュール化、人材管理等の新しい戦略を開発しています。石油・ガス産業が直面する新しい現実に対応するには、資産の供給を見直し、有効市場への参入条件の徹底的な分析、入札競争を回避しつつ市場での長期的な存在感を確保することが推奨されます。

Topics: 産業機器