The article first appeared on japanindustrynews.com.
日本家屋の伝統とは
日本では、古くからの怖いものの例えとして、地震・雷・火事・親父、台風などと言われ、家の築造については、火災、台風、地震にどのように備えるかが重要な課題でした。
火災については水をかけて消火するより、家を引き倒して隣近所に燃え移る延焼を防ぐ消防が江戸時代には主流でした。そのような価値観もあり、日本の家自体はある程度簡便な、仮住まい的木構造が普及しました。
また、台風については、木造の脆弱な建屋が風で飛ばされないよう重い瓦屋根で家屋全体に重しをする方法がとられました。反面、重い屋根は地震時に建屋を倒壊させる主要な原因でもありました。
時代が少し進んで明治期以降、濃尾地震(1891)、関東大震災(1923)などの大規模地震の経験を踏まえて、耐震基準が市街地建築物法(1924)に組み込まれるに至りました。
日本は南北に長い島国ですが、主に温帯に位置し、古代から、日本の中心、都が置かれた地域(奈良、京都、大阪、東京)では冬の寒さはさほどでは無く、主に夏の暑さに対処する、風通しの良い住居・建物が古来から意図されました。これは、日本家屋が脆弱な隙間だらけの木造で発展したもう一つの由来でもあります。
欧米の家屋と比較すると
これに対して、欧米の主要都市はおおむね寒冷帯、日本の地域では札幌・旭川などと同じ緯度帯に位置します。そのため、欧米の建物は古くから冬の寒さに備えた、冬仕様の構造として発展してきました。また、地震地帯も少なく、かなり堅固な石造などの建物が発展する要件もありました。
米国には地域毎の特性(北部の寒冷帯、南部の温暖帯、西海岸の地震帯、南東部のハリケーン帯)に由来する主に3つのビルディングコードの体系起源(建築基準-ICBO、BOCA、SBCCI)があります(現在ではIBCに統合-2000)。
日本の建築基準は、温帯、地震地帯の特性を持ってカリフォルニア州あたりの基準に近しいかもしれませんが、寒冷帯の冬を重視した熱環境性能基準は発展し得なかったのだと思います。
温帯に位置して、かつ、簡素な木構造を主流とした日本の建築において、暖かい家を造る、エネルギー効率の良い建物を造る、省エネを図るといった発想はついぞこの最近までおこりえませんでした。
しかし、第二次世界大戦、1960年代からの高度経済成長期以降、日本の経済発展に伴い、暖房機器の充実、冷房クーラー使用の増大をしながら、隙間だらけの家屋構造は旧来のままといった矛盾につい最近気付き(省エネ法1979)、かなり早いペースで日本の建築基準・省エネ基準は欧米寒冷地帯の基準をキャッチアップしつつあります。
Japan Industry News 2017年8月掲載記事の日本語訳です。