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2016年は年初からツアーバス事故などの痛ましいニュースや、繰り返される食品スキャンダルなどが報じらました。このようなニュースに触れるたびに、安全と品質管理の重要性を再認識します。
事故や災害というものは、油断しているときに限っておきるものであり、だからこそ、リスクを最小限にするため、プロセスの標準化ということが必要になります。
今回は、日本の労働現場における安全衛生管理に対する規制の動きについてご紹介します。
「安全第一」とは
日本では「安全第一」という言葉がよく聞かれます。日本人にとっては、工事現場などで使われる標語として、日本で考え出されたコンセプトのように思われているかもしれません。しかし、これは、1900年代初頭に掲げられた、USスチール社の、「安全第一、品質第二、生産第三」という考えに由来するものです。
当時のUSスチール社長エルバート・ゲーリー・ヘンリーが、これを会社の方針として掲げると、労働災害はたちまち減少しました。同時に品質・生産も向上し、さらに上向いた景気の波に乗り、大きな実績に結びつきました。やがてこの安全第一という標語がアメリカ全土に、さらに世界中に広まっていきました。
日本の労働安全衛生法とOSHMSの採用
日本では1972年にすでに労働安全衛生法がに制定され、労働災害の防止のための危険防止基準が設けられました。これは、事故があった場合の責任を明確にし、事故を防ぐための自主的活動を促進することを組織に求めるものでした。
しかしながら、労働災害による死亡者数は、1998年時点で年間2000人を超えていました。政府は死亡災害を年2000人以下にすることを掲げ、そのための切り札として、英国の国家規格BS8800労働安全衛生マネジメントシステムOSMSを試験的に採用しました。これは、当時英国の労働災害の発生件数、強度率(のべ労働時間当たりの労働損失日数の割合 注1)がずば抜けて低かったためです。
この規格は試験的に国内のあるゼネコンで導入されました。その結果、1年間で、度数率(のべ延労働時間当たりの労働災害の頻度 が1.2から0.3まで軽減されました。その結果を基に、当時の労働省(現在の厚生労働省)が1999年4月「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」を発令しました。
注1)強度率とは、1,000延労働時間当たりの労働損失日数をもって、災害の重さの程度を表したものです。統計をとった期間中に発生した労働災害による労働損失日数を同じ期間中の全労働者の延労働時間数で割り、それに1,000を掛けた数値です。
注 2)度数率とはのべ延労働時間当たりの労働災害の頻度を表すものです。統計をとった期間中に発生した労働災害による死傷者数を同じ期間中の全労働者延労働時間数で割り、それに100万を掛けた数値です。
注1、注2とも厚生労働省ホームページより http://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo22_1.html
- 続く -
Japan Industry News 2016年2月掲載記事の日本語訳です。