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サプライヤー監査エキスパートインタビューその3 | RBA監査にはグローバルな視点が不可欠

Posted by TUV Rheinland Japan on 2024/02/08 16:56:36
TUV Rheinland Japan

企業の社会的責任(CSR)を果たすためには、また企業のブランド価値を維持するためには、企業活動が社会へ与える影響に責任を持ち、自社だけでなくサプライチェーン全体の一貫した管理が必要です。

今回はRBA行動規範に基づくサプライヤー監査(CSR監査)の専門家であるテュフ ラインランド ジャパン ピープル&ビジネス・アシュアランス事業部(旧システム事業部)カスタマイズサービス部の野々山 裕城とチョウドゥリ エルシャドアリにインタビューしました。多くのISO規格の主任審査員資格を持ち、ISO審査経験も豊富なお二人にグローバル規格・基準に基づくサプライヤー監査に取り組む上で大切なことなどを聞きました。

 

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― ― ― ISO審査とサプライヤー監査の両方を経験されていますが、審査における違いを教えてください。

野々山、チョウドゥリ  今回は電気・電子業界向けのサプライヤー監査に焦点を当ててお話できればと思います。テュフ ラインランドは世界的なブランド、メーカーのサプライヤー監査を請け負っていますが、多くのブランド、メーカーがRBAResponsible Business Alliance)を監査基準に選んでいます。電気・電子業界向けのサプライヤー監査では、このRBA行動規範を理解することが非常に重要となります。 

RBA行動規範とは、主に電気・電子業界に向けた、安全な労働環境、労働者の保護、環境負荷に対する責任を促進するためのガイドラインです。RBA行動規範を遵守することでCSRに基づく経営を行っていることを示すことができます。

 

RBA(Responsible Business Alliance)の5つの基本分野

①労働
②安全衛生
③環境
④倫理
⑤サプライヤーチェーンマネジメントシステム

 

また上述の①~④のそれぞれに「要求事項」および「マネジメントシステムに関する要求事項」があります。

 

ISO審査では、要求事項に従い何をどこまでやるのかは組織自身が決めますが、RBAに基づいたサプライヤー監査(以後RBA監査)では、決められた項目を決められた基準通りに実行していることが求められます。そのひとつひとつをチェックリスト方式で確認します。

 

監査はRBA行動規範およびその要求事項に基づいて行われますが、例えば企業がISO 14001のマネジメントシステムを構築していれば、それは③の環境の項目への対応に十分に活用できます。ISO 45001と②の安全衛生も同様です。①労働、④倫理については国連グローバル・コンパクトの10原則、SA 8000(就労環境評価の国際規格)、ILO(国際労働機関)条約などに基づいて社内体制を構築されていれば比較的わかりやすいと思います。

 

またISO審査は、サーベイランス審査および再認証審査を受審し、3年周期で認証書を更新していきますが、RBA監査は一回ごとの監査となります。初回監査、その後不適合があればその是正処置を確認するクロージャー監査を行います。RBA監査の監査レポートの有効期限は2年ですが、その後の監査周期は監査依頼元のブランド、メーカー、あるいは受監企業の意向によります。監査レポートの有効期限が切れる2年ごとに必ず監査を受けなければならないわけではありませんが、継続して監査を受けることはRBA 行動規範への適合性の向上とビジネスチャンスの拡大に繋がるでしょう。

 

 

「世界でビジネスを成功させる」という「意識」を

― ― ― RBAのようなグローバル規格・基準で監査を受けるお客様にとって、取り組む上でどのような点が大事でしょうか。

野々山、チョウドゥリ  RBAの要求事項には、日本の法律より厳しい基準が設定されている場合があります。その点は注意が必要でしょう。世界でビジネスを展開するためには、よりグローバルな視点が不可欠であり、日本の法律よりもさらに厳しい基準に合わせる必要も出てきます。

 

RBA行動規範、要求事項、監査レポートなどの言語が英語のため、RBA監査のハードルを高く感じるご担当者もいらっしゃるかもしれませんが、オンサイトでの監査は日本語で行っています。監査員とも日本語でコミュニケーションが可能ですので、その点はご安心いただければと思います。PSCI(製薬業界向け行動規範)、BSCI(労働環境改善のための行動規範)などのRBA以外のグローバル規格・基準に基づくサプライヤー監査についても同様です。

 

RBA監査は全社的に取り組む、トップ自らが積極的に関わることが大事です。マーケットを見据えグローバルにビジネスを展開していく覚悟のある企業は、初回の監査で多くの指摘事項が出ても前向きにひとつひとつ対応して改善されています。「世界でビジネスを成功させる」という「意識」が監査対応にも表れます。そしてリソースの適切な配置も必要です。



高い専門性、グローバルな視点での監査が強み

― ― ― テュフ ラインランド ジャパンのサプライヤー監査の強みはどのようなことでしょうか。

野々山、チョウドゥリ  監査員の専門性が高いことです。業界の知識があり、CSR監査、サプライヤー監査だけでなく、ISO規格・マネジメントシステム審査にも精通しています。また常にグローバルな視点で監査を行っています。

 

監査の後、「これまでCSR監査のイメージがなかったが、監査員のコメントが分かりやすく、テュフ ラインランドで受けて良かった」、「CSR監査が世の中で必要な意味が分かった。改善していく」、「今後別の工場でも受けていきたい」などのコメントをいただくことがあります。

 

電気・電子業界だけでなく、自動車業界からもRBA監査の依頼が入り始めていますが、テュフ ラインランドは自動車業界にも精通しています。

 


監査ではお客様とのコミュニケーションを重要視。計画通りに進めるためのタイムマネジメントも常に意識

― ― ― 監査員として大切にしていることを教えてください。

チョウドゥリ  お客様とのコミュニケーションを一番大切にしています。監査というと身構えてしまう方も多いですので、まずは緊張をほぐし安心していただきます。難しい表現は避け、分かりやすい説明を心がけています。また組織の状況にあわせて、柔軟に対応するよう意識しています。

 

そして、できるだけグローバルな視点で監査をするよう心掛けています。当社は世界50ヵ国に拠点を持つグローバル企業です。世界からの情報を収集し、監査に反映させることができるのがテュフ ラインランド ジャパンの強みだと思っています。また私自身は日本で生まれ育ったわけではないので、企業経営に対する視点や労働環境の捉え方などにおいて、少し違った目線を持っていることもひとつの強みと捉えています。長く海外で生活し、また海外とのビジネスの経験を豊富に持っている野々山さんにも同じことが言えるのではないでしょうか。


野々山  私もコミュニケーションは重要視しています。また当たり前ですが、監査は決められた時間内に終わらせなければなりません。RBA監査は確認項目がとても多い監査ですので、どのように時間配分し、全要求事項を確認するかのタイムマネジメントが大切です。限られた時間の中で計画通り監査が進められるよう、ここでもまたお客様とのコミュニケーションを大事にしています。

 

 

― ― ― これからRBA監査を受ける企業の方にメッセージをお願いします。

 

野々山  何よりもまずはRBA行動規範をしっかりお読みいただくことをお勧めします。監査で聞かれる内容のイメージがつかめると思います。RBA行動規範は日本語も出ています。また先ほどと繰り返しになりますが、「全社で取り組む」ことが重要です。

 

チョウドゥリ  日本的な考えのみにとらわれず、柔軟にグローバルな視点で考える認識を持っていただければと思います。もう日本の視点だけではビジネスは成り立たなくなっていますので。



野々山 裕城
テュフラインランドジャパン

ピープル&ビジネス・アシュアランス事業部

カスタマイズサービス部

スペシャリスト

主任審査員(ISO/IEC 27001ISO/IEC 20000-1RBA


2006年 テュフ ラインランド ジャパン入社。前職でのITに関わる経験を生かし、ISO 2700120000-127017などの情報セキュリティの第三者審査を担当。2017年より電子デバイス系の製造業のCSR監査も並行して行い、現在は主にCSR監査を担う。

 

チョウドゥリ エルシャドアリ
テュフラインランドジャパン

ピープル&ビジネス・アシュアランス事業部

カスタマイズサービス部

審査員

主任審査員(ISO 9001ISO 14001ISO 45001RBAPSCI


2018年 テュフ ラインランド ジャパン入社。前職では20年ほど半導体の研究開発・設計・生産に関わる。ISOマネジメントシステム審査、CSR監査、双方を担当し、現在は主に電子デバイス系の製造業のCSR監査を担う。

 

 

テュフ ラインランド ジャパンは、ISOなどの認証審査に加え、グローバル規模のサプライヤー監査代行サービスを提供しています。


<参考リンク – テュフ ラインランド ジャパン ウェブサイト>
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RBA監査

<参考リンク – テュフ ラインランド ジャパン ブログ>
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更新日 : 2/8/2024

Topics: マネジメントシステム, tuv.communication, エキスパートインタビュー