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サプライヤー監査エキスパートインタビュー | 「気づき」のある監査で継続的改善を

Posted by TUV Rheinland Japan on 2023/05/08 15:38:31
TUV Rheinland Japan

企業の社会的責任(CSR)を果たすためには、また企業のブランド価値を維持するためには、企業活動が社会へ与える影響に責任を持ち、自社だけでなくサプライチェーン全体の一貫した管理が必要です。

今回は、これまでサプライヤー監査を数多く担当してきた、テュフ ラインランド ジャパン システム事業部 マネジメントシステム認証部 監査員 津村 雅志にインタビューしました。

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― ― ― 津村さんの担当している、サプライヤー監査の概要を教えてください。

大手小売業を中心とした複数の企業のサプライヤー監査を担当しています。昨年は50以上の工場で監査を実施しました。

サプライヤー監査はCSR監査とも呼ばれますが、各企業の行動規範に基づく要求事項(チェックリスト)に沿って行います。各社重点的に確認したい点などは異なってきますが、大枠で求めていることは同じです。行動規範は、国連のグローバルコンパクト 10原則、世界人権宣言、ISO 26000(組織の社会的責任に関する国際規格)などがベースとなっています。


― ― ― 津村さんは、どのような経緯で監査員になられたのでしょうか。

監査員になる前、17年間食品メーカーに勤務しており、その間ISO審査を受ける側にいました。生産技術部門での仕事をしながら、ISO事務局のメンバーにもなり、FSSC 22000、ISO 14001、ISO 45001(当時はOHSAS 18001)の統合マネジメントシステムの構築を経験しました。

当時、「どのように製造現場を改善していくか」という点でもやもやしていましたが、監査を受けることで気づきがあり、進むべき方向がはっきりしました。監査によって、会社が良くなっていくことを肌で感じました。

監査員に興味を持ったきっかけは、監査員の仕事を身近で見ることで、やりがいのある魅力的な仕事だと感じたことです。そして、製造現場で得た実務経験は、製造機械や使われる薬品の知識ひとつをとっても、現在の監査員としての仕事にいきています。


― ― ― 津村さんが考える、サプライヤー監査の意義を教えてください。

サプライヤー監査は範囲が広く、品質、環境、労働安全、人権論理、さらに情報セキュリティも…と、「広く浅い監査」と受け取られるかもしれません。しかし、企業をあらゆる側面から確認し、企業の本来あるべき姿を目指していくものです。それはブランド力強化にもつながっています。

「気づき」のある監査を


― ― ― 多くのサプライヤー監査をされてきた経験から、津村さんが監査をする際、特に注力されているのはどのような点でしょうか?

「受けて良かった」と思っていただける監査を目指しています。不適合事項を指摘することのみに注力するのではなく、相手の話をよく聞き、思いをくみ取ったうえで、気づきを与えられるように心がけています。

例えば、「要求事項にあるから、法令に書いてあるから、これはだめです」ではなく、「従業員のケガを防ぐためには、〇〇すると良さそうですね。少しでもリスクを下げられると良いですね」とお話します。従業員の健康と安全は、経営者、マネジメント層や工場長の皆さんが最重要視されていることですよね。

要求事項の目的や、指摘の理由をきちんと伝え、そもそも何のための監査なのか、納得していただけるよう努めています。

 

サプライヤー監査の流れ(例)

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― ― ― 「監査を依頼する組織が、共通して求めることはどのようなことでしょうか?

サプライヤーとの関係を良好にすること、サプライヤー社内の風通しを良くし、またコンプライアンス違反をなくすことなどを主な目的に監査を依頼されることが多いと思います。自社だけでなく、製造委託先、販売先などのサプライチェーン全体を良くしていくことが、CSRであり、その結果企業のブランド価値向上にもつながります。


― ― ― 監査を受けるサプライヤーからは、どのような質問がありますか。

初めて監査を受けるサプライヤーのなかには、「CSRってどのようなことでしょうか?」、「ビジネスを成立させるためには監査を受けないといけないですね…」と、監査を消極的にとらえている方もいます。CSRに対する理解がまだ浸透していないのかもしれませんが、「CSR=社会貢献活動」だと理解されている方も多くいらっしゃいます。CSRは企業が社会的責任を果たすことです。企業活動が従業員、取引先、社会へ与える影響に責任を持たなければなりません。

 

PDCAサイクルはサステナビリティ


― ― ― サプライヤー監査を通して、潜在的な問題を明らかに。そして継続的に改善を。

監査ではじっくり話を聞き、不適合箇所については、その理由をしっかり説明します。改善ポイントに自ら気づいていただくことが大切だと思っています。急がず、一歩一歩改善できるよう、一年一年レベルアップできるよう、お話していきます。乗り越えられない壁は作らないように意識しています。

サプライヤー監査をきっかけに、社内の課題が明確になり、いろいろな分野に対して、継続的にPDCAのサイクルを回す仕組みをつくっていくことが、目指す姿です。継続的という意味で、PDCAサイクルはサステナビリティです。これは、SDGsの取り組みに直結していますよね。サステナブルな企業になることは、監査を受けるひとつの目的かもしれません。その結果、ESG投資の対象企業にもなり得るかもしれません。

会社の中身をよくする、会社全体の士気をあげる、外に向けてアピールする、など、サプライヤー監査は、いろいろな良い側面があります。「CSRに取り組むぞ」と決めた会社は、改善も速いです。社内で新たにCSR推進部をつくり内部監査を実施したり、自分たちがサプライヤーの立場で監査を受けるだけでなく、自社のサプライヤーである委託先工場に教育をしたり、監査を実施したりするケースも見てきました。


― ― ― テュフ ラインランド ジャパンのサプライヤー監査の強みを教えてください。

「気づきのある」監査だと思っています。

繰り返しになりますが、まずは監査の目的をしっかり説明します。チェックリストに沿った〇✕み焦点を当てるのではなく、監査を通して、潜在的なリスクに気がついたり、改善の方向性が見えてきたり、「受けて良かった」と思っていただける監査を提供しています。

「取引をするために仕方のない監査」ではなく、「従業員のためになる、会社のためになる、地球環境のためになる監査」です。そのような監査を実施するためには、監査員には幅広い知識と高い専門性が求められます。テュフ ラインランド ジャパンには、現場を熟知し、経験と実績に基づいたコメントをできる監査員がそろっています。

また、テュフ ラインランド ジャパンでは、年に数回、「エクスペリエンス エクスチェンジ」と呼ばれる勉強会があり、審査員・監査員同士で、経験や問題点を共有し、それを今後の監査にいかしています。

 

― ― ― 津村さんが考えるサプライヤー監査の今後を聞かせてください。

 今後、監査の需要はますます増えていくでしょうし、監査の内容も世の中の情勢にあわせて変化・発展していくと考えています。サプライヤー監査は、マニュアルがあってないようなものです。私たち監査員も、それに対応すべく日々アンテナを高く持ち、監査のクオリティを高める努力を続けていきます。

また、今後AIが監査業務の中にも取り入れられてくるかもしれませんが、人のパフォーマンスは人が見ていく必要がありますので、監査自体がAIに100%取って代わることはないと思っています。しかし、監査の効率化や、データ収集や分析のためなどに、AIを積極的に活用していくことは良いことだと思いますし、その必要もあると思います。

「受けてよかった」と思ってもらえるような監査を、これからも心がけていきます。

 

津村 雅志
テュフ ラインランド ジャパン
システム事業部 マネジメントシステム認証部
CSR監査員

2017年まで17年間、食品メーカーに勤務。製造部門、生産技術部門で、製造工程の生産性向上などの業務に携わる。2018年にテュフ ラインランド ジャパンの監査員としての研修をスタート。2019年よりサプライヤー監査を担当。ISO 9001、14001、食品関連規格の技術専門家も務める。

 

テュフ ラインランド ジャパンは、ISOなどの認証審査に加え、グローバル規模のサプライヤー監査代行サービスを提供しています。

<参考リンク – テュフ ラインランド ジャパン ウェブサイト>
サプライヤー監査

<参考リンク – テュフ ラインランド ジャパン ブログ>
<シリーズ> エキスパートインタビュー


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更新日 : 6/20/2023

Topics: マネジメントシステム, tuv.communication, エキスパートインタビュー