tuv-jp-blog-banner

スマートグリッドエキスパートインタビュー:電力システム改革の最前線 - バーチャルパワープラント(VPP)とOpenADR

Posted by TUV Rheinland Japan on 2020/06/29 9:57:17
TUV Rheinland Japan

電力システム改革を担う、VPP(バーチャルパワープラント、仮想発電所)とは。VPPを実装する上で必須となるOpenADRとは。

2011年の東日本大震災に伴う電力需給のひっ迫により、需給バランシング型のエネルギー管理システムの検討が始まりました。現在は、大規模発電所主体のエネルギー供給から、需要家側のエネルギーリソースを活用する電力システムの構築が進められています。分散エネルギーリソースの一つひとつは小規模ですが、広範囲に分散されているそれらのリソースを束ね、制御することで、電力需給バランス調整を可能にします。

今回は、スマートグリッドの専門家である、テュフ ラインランド ジャパン 製品部 ワイヤレス/IoT オペレーションズ シニアスペシャリスト 水城 官和(みずき のりかず)にインタビューしました。VPPが必要となった背景、現状、そして、VPP標準としてのOpenADRについて詳しく解説しています。また、2011年以降、市場から要求されたタイミングで立ち上げてきた、スマートグリッド関連の認証試験についてもお話しします。

TUV-Rheinland-Mr.Mizuki-Image

― ― ― まずは VPPについて教えてください。

水城 バーチャルパワープラント(以下VPP)は、国内だけでなく、欧米をはじめ世界中で普及が期待されている技術です。

まずはVPP (Virtual Power Plant/仮想発電所)と呼ばれる所以ですが、「太陽光発電をはじめとする多種多様な再生可能エネルギーや、都市部等で使用される蓄電池、燃料電池など、広範囲に分散されたエネルギーソースを制御することで、あたかも発電所と同等の機能を提供できるようにするしくみ」を仮想発電所と表現したためです。

国内で、VPPの必要性が顕著となったのは、東日本大震災に伴う電力需給のひっ迫でした。従来の電力システムは、需要に合わせて発電量を増やし供給する形でしたが、国内で初めてともいえる電力需給ひっ迫を境に、電力使用量を減らすという概念を含めた需給バランシング型のエネルギー管理システムを検討することになりました。供給力としての太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギー導入と、需要家側の太陽光発電、家庭用燃料電池、蓄電池、電気自動車、ネガワットなどの分散型エネルギーリソースがVPPにとって欠かせないため、それらの普及が始まったのもVPPを迎える良いタイミングだったといえるでしょう。

そして今、これまでの大規模発電所主体のエネルギー供給から、需要家側のエネルギーリソースを活用する電力システムの構築が進められています。需要家側の分散エネルギーリソースの一つひとつは小規模ですが、広範囲に分散されているそれらのリソースを束ね、制御することで、電力需給バランス調整を可能にします。それらはIoT技術を駆使した革新的なエネルギーマネジメントシステムの進化によって実現されています。

TUV-Rheinland-Mr.Mizuki-fig1-Image

出典:経済産業省 資源エネルギー庁ウェブサイト  https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/advanced_systems/vpp_dr/about.html


― ― ― 実証実験は、どのような段階でしょうか。


水城 経済産業省 資源エネルギー庁による補助金事業のVPP構築実証は、2016年より5か年計画で行われてきており、この2020年が最終年度の予定です。

経済産業省が進める本事業は、工場や家庭などが有するエネルギーリソース(蓄電池、発電設備、電気自動車等)を、高度なエネルギーマネジメント技術により遠隔・統合制御し、あたかも1つの発電所(バーチャルパワープラント)のように機能させることで、電力の需給調整に活用する実証を行うことを目的としています。

さまざまなエネルギーリソースやDR(ディマンドレスポンス)ひっ迫度合に応じた電源種別毎の実証など、より現実的な運用を目指してここまで段階を踏んで行われています。公募情報については、本実証事業の執行委託先である一般社団法人環境共創イニシアチブのウェブサイトをご確認ください。

― ― ― 2021年度には、需給調整市場開設が控えています。

水城 そうですね。容量市場(国全体の将来の供給力(kW)を取引する市場)とともに、需給調整市場(電力の周波数維持、安定供給を目的とする調整力の取引市場)には国内で大きな期待がかけられています。これらの電力新市場開設のためにVPP実証の準備を進めてきたといえるでしょう。

需給調整市場によって、再生可能エネルギーのさらなる普及が期待でき、国内市場の要求する高度な技術仕様を追随することによって、関係各社は国際競争力を得ることができます。例えば、新市場のキーデバイスの1つある蓄電池は、価格的に他国製品から後塵を拝している現状があります。しかし、安定的な需給バランス確保のために、蓄電池の安定供給は新市場のインフラにとって不可欠です。

また、新市場によるアグリゲータービジネスは、関係各社にとって、現時点ではそのビジネス効果が見えにくいかもしれません。しかし、電力会社、アグリゲーションコーディネーター(AC)、リソースアグリゲーター(RA)、リソース提供社といったさまざまなビジネス形態の広範なステークホルダーによる、新たなシナジー効果が期待できると思います。

― ― ― VPP標準のOpenADRについて教えてください。

水城 社会インフラとしてVPPを実装する上で、OpenADR製品の開発が急務となっています。

VPPは、電力会社、アグリゲーション・コーディネーター(AC)、リソース・アグリゲーター(RA)、リソースから構成されるのが一般的です。それぞれの立場で、OpenADRの要求度合はさまざまですが、すべての立場で実装検討が行われ、実証事業でも多く使用されているようです。少なくとも、電力会社からACに対して発信されるデマンド・レスポンス(DR)信号は、OpenADRプロトコルとなります。

そこで注意しないといけないのは、OpenADR技術は、OpenADRアライアンスがその知的財産権を保有し、その開発、使用許諾に関してロゴ認証制度を取り決めているため、製品開発、製品の使用に当たってはアライアンスの定める認証ポリシーに則る必要があるということです。つまり、場合によってはOpenADRユーザーが知らぬ間に、OpenADRアライアンスに対してコンプライアンス違反をしてしまうケースがあるということです。

「自社OpenADR準拠製品が認証を取得する必要があるのか?」という疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。OpenADRアライアンスが定める認証判断基準となる認証ポリシーは、認証要求についての解釈が難しく、開発会社やユーザーの多くにとってハードルが高いものでした。逆に言うと、ユーザーにとって都合のよいような解釈もできうる状況にかつてありました。

そこで、2019年にVPP/DRの標準化や実証を先導する早稲田大学が中心となって、OpenADRアライアンスと検討が行われ、アライアンスは認証要求をより具体化した認証ポリシーの改正を行いました。その過程で、早大の研究員でもある私がアライアンスとの折衝窓口の役割を担いました。その結果、日本国内のOpenADR普及に支障が出ないように、日本で対応できる窓口を作るべきとのアライアンス要望により、認定試験所であるテュフ ラインランド ジャパンが“試験”に加えて、“認証”においても相談を受けつけるようになりました。

「OpenADRを使っているけど、認証は本当に必要なの?」と疑問をお持ちの方、決して全てのケースで認証が必要ということではありませんので、安心を得るためにもぜひ当社にご相談ください。

― ― ― テュフ ラインランド ジャパンが提供するスマートグリッド関連サービスには、どのようなものがありますか。またその強みを教えてください。

水城 2011年の東日本大震災以降、当社は、市場から要求されたタイミングでスマートグリッド関連の認証・試験サービスを複数立ち上げてきました。その先陣を切ったのが、電気のスマートメーターに標準搭載されたプロトコルWi-SUN、G3-PLCそしてECHONET Liteでした。

当時は、各地域の電力会社の厳しい導入時期や仕様要求に応えるため、まだ認証試験方法や試験設備が決まってない段階から、普及団体、メーカーやテストツールベンダーと協力して、試行錯誤を繰り返しながら試験準備を行いました。

初期スマートメーター製品は、2014年3月の市場導入に合わせる必要があったために、製品の認証デッドラインは極めて厳しいものでしたが、認証試験ラボとしてその要求に無事に応え、スマートメーター市場の立上げに貢献することができました。
思い返せば2000年から順を追って、Bluetooth、Wi-Fi、Zigbeeなどの無線製品の認証試験所の立上げを行い、実績を積み上げてきた経験のお陰かなと思います。

また、ほぼ同時期から電力需給調整・デマンドレスポンスの標準化が検討され、OpenADRが第一候補となり、国内での認証を強化したい市場要求に応える形で2014年にOpenADR認証試験ラボをスタートしました。OpenADRについては、まさにこれからの電力市場開設に合わせて、認証・試験サービスを提供していきたいと考えています。

また、当社では、国内外の無線製品の電波法・事業法といった法令に伴う認証・試験も行っているため、製品によっては、複数の認証・試験をワンストップで提供が可能です。負担の大きいたくさんの認証申請を窓口一つで対応できるため、お客様から大変喜ばれています。

ここまでサービスを揃えるのに長い年月がかかりましたが、現状考えられる国内で普及している無線規格やスマートグリッド関連の認証試験サービスはほぼ網羅でき、お客様に便利に使っていただける存在になれたかな、と自負しています。

TUV-Rheinland-Mr.Mizuki-fig2-Image

― ― ― VPPに関わる事業者の方へ、メッセージをお願いします。

水城 昨今のスマートグリッドやVPPといった電力インフラにおいて利用する通信技術は、独自仕様が敬遠され、標準化団体による技術を採用することが多くなっています。標準を使うことの大きな意義は、他社間製品のインターオペラビリティ(相互運用性)を担保することと、規定された基準となるスキームに則って認証を行うことでコンプライアンスに準拠することです。標準化団体が定めている技術要件の確認が認証試験であり、その他の認証ポリシーで定められた条件とともにクリアして、認証を取得することができます。

私も過去にメーカーの開発部門に所属していたのでわかるのですが、認証試験は、開発者にとって邪魔な存在に映るかもしれません。開発終了し、社内評価でも合格したのに、最後の最後に受けないといけない面倒くさいハードルという印象でしょうか。しかし、標準化規格を使う以上は、それは避けては通れない存在なので、どうやって楽に乗り越えるかを考えるべきだと思います。

これまでたくさんの企業の製品の認証試験に立ち合ってきましたが、自社の確認試験ではうまくいったのに、認証試験で不合格になるケースを多く見ます。ほとんどの場合、自社製品同志のインターオペラビリティは同じ仕様なので、うまく繋がりますが、認証試験で使うリファレンス・テスターとではコンフォーマンス・エラーが出てしまうというものです。

標準化団体は、その技術仕様書とともに試験仕様書を用意しています。技術仕様書で定めたコンフォーマンスルールを、試験仕様書で書かれたテストケースで確認します。テスターは、試験仕様書どおりに動作しますので、技術仕様書の解釈を間違えて開発してしまうと、当然認証試験にパスしません。しかも、間違えやすい項目は、多くの開発者が共通して同じミスをしていることが多いように思います。

そこで、技術仕様書の解釈を迷ったときは、一度立ち止まって試験仕様書を見て、その解釈を確認することをお勧めします。また、試験で間違えやすいポイントは共通しており、試験に立ち合っているテストエンジニアは、それを経験として蓄積しています。開発途上の製品でも、認証試験前の確認試験を受けていただくことで、経験あるテストエンジニアから、コンフォーマンス仕様について認証試験の観点からお伝えできることが多くあるかと思います。まずは、お気軽にご相談ください。

― ― ― 最後に、水城さんは、早稲田大学 スマート社会技術融合研究機構 先進グリッド技術研究所の招聘研究員でもありますが、ここではどのような活動を行っていますか。認証業界での、これまでの活動と合わせて教えてください。

水城 私自身がスマートグリッドに関わり始めたのは、2007年からで、北米のスマートホーム関連機器を開発するスタートアップ企業で活動していました。当時、国内には、スマートメーターやHEMSのような機器はまだ検討段階で存在しておらず、日本に先駆けてSEP2.0・OpenADRを実装したHEMSやIn-Home-Displayといった、スマートーメーターBルートに繋がる国内向け機器の展開を目指していました。

日本企業数社から興味いただき、パートナー契約を結びましたが、当時の国内の動きはゆっくりで、なかなか社内検証実証の域を超えることはできない時期が続きました。その最中で起きた2011年3月の東日本大震災で状況は一変し、それまでは日本で電力需給ひっ迫の問題はほぼ皆無で、日本のインフラはすでにスマートグリッド化されているとまで囁かれていましたが、ベース電力を失ったことで電力調整や電力の見える化は必須となりました。

これをきっかけにスマートグリッド化は加速されました。国内の標準技術の選定が急ピッチで進められ、スマートメーターや電力調整市場などの整備を行われ、現在に至っています。

2011年11月からは、テュフ ラインランド ジャパンで、スマートグリッド関連の標準規格となったWi-SUN、G3-PLC、ECHONET、そしてOpenADRの認証試験の立ち上げを行いました。前職では、最終的な目標に辿り着けなかったわけですが、新規ラボの立ち上げには、それまでにお付き合いのあった社外関係者の方々のご協力やご助言、標準化団体との良好な関係が大きな手助けとなりました。

その後、それまでのご縁で、2017年より早稲田大学の招聘研究員として活動を開始することになりました。そこでは、OpenADRをIEC国際標準化するべく支援活動を行い、紆余曲折ありましたが、2018年11月に無事にIS認定され、IEC 62746-10-1として規格発行の成果を上げることができました。

その他、ERAB OpenADR WGの委員として活動し、国内OpenADR実装基準となる「ディマンドリスポンスインターフェース仕様書」、「機器別実装ノート」の発行のお手伝いをしました。また、OpenADRアライアンスの技術的、認証ポリシーなどの折衝窓口を任されたのは大きな仕事でした。

私は、20年前の2001年に認証業界に入りました。長いようですが、振り返るとあっという間だったように思います。良いタイミングで良い技術と出会い、社内外のたくさんの人に助けていただいたことでここまでやってこられたことに、改めて感謝したいと思います。VPPに関しては、電力業界の最先端分野に認証を通して触れることができ、私にとっては、大変な大仕事ではありますが、とてもやりがいを感じています。これからも新たな出会いに期待し、そして、みなさんの期待に少しでも応えられるように頑張っていきたいと考えています。

水城 官和 (みずき のりかず)
テュフ ラインランド ジャパン 製品部
ワイヤレス/IoT オペレーションズ スマートグリッド シニアスペシャリスト
2001年より、無線技術の認証試験に携わる。2011年より、スマートグリッド関連の標準規格となったWi-SUN、G3-PLC、ECHONET、そしてOpenADRの認証試験の立ち上げに従事。早稲田大学の招聘研究員として、OpenADRのIEC国際標準化を支援(2018年11月、IEC 62746-10-1として発行される)。

<参考リンク - 森北出版>
OpenADRによるデマンドレスポンス通信岐阜大学 蜷川忠三/山田倫久 共著
スマートグリッドでの活用が期待されるデマンドレスポンスのための通信規格「OpenADR」の初の解説書。
※テュフ ラインランド ジャパン 水城 官和が、「8章 OpenADR認証」を執筆協力しました。

<参考リンク – テュフ ラインランド ジャパン 公式ブログ>
OpenADR 認証試験サービス

<シリーズ> エキスパートインタビューはこちら

お問い合わせ:カスタマーサービス(TEL: 045-470-1850 E-Mail: info@jpn.tuv.com

更新日 : 3/30/2021

Topics: エコーネット機器認証, IoT, スマートハウス, 通信機器, tuv.communication, 無線, IT機器, エキスパートインタビュー, expert-telecom