tuv-jp-blog-banner

今さら聞けないSCIP ~超初心者向け~

Posted by TUV Rheinland Japan on 2020/11/27 12:31:20
TUV Rheinland Japan

2021年1月5日からEUで導入が義務化

人と環境に配慮した持続可能な社会を築くため、あらゆる業界の企業はさまざまな取り組みを進めています。例えば、製品の製造に関わる多くの企業の取り組みの一つとして、製造工程で使用される有害物質の管理が挙げられます。しかし、多くの企業は、このような有害物質の管理に多大な労力を費やしているのも事実です。

その主な理由は、使用が制限されている化学物質の数が多いこと、そして日々更新される情報の収集に時間と手間がかかることです。情報整理や情報収集は、適切な管理をするうえで企業にとって大きな課題です。

世界にある各種管理制度の中で、本記事でご紹介するSCIPデータベースは2021年1月5日から運用が開始されます。このような課題を抱えてる企業が、スムーズにSCIP運用への対応を進めることができるよう、SCIPデータベースの基本情報を詳しくご説明します。

SCIP_shutterstock_145005193

SCIP

欧州化学物質庁(ECHA)は、高懸念物質(SVHC)を含む成形品や複合体(製品)を管理するデータベースを発表し、情報管理の改善を図っています。このデータベースがSCIP*1と呼ばれ、「廃棄物枠組指令(WFD: Waste Framework Directive)*2」に基づいて制定されています。REACH規則認可の対象候補物質リスト(CLS: Candidate List Substances)にあるSVHCを0.1 重量%以上含有する成形品に関する情報を登録しなければなりません。

*1 “Substances of Concern In articles as such or in complex objects (Products) “の頭文字
*2 環境や人の健康に悪影響を及ぼす廃棄物の発生や管理に対処するため、また、循環型経済への移行に不可欠な資源の効率的な利用を改善するための措置を定めたものです。

 

SCIP通知義務の対象

認可対象物質の候補リストにあるSVHCを0.1 重量%以上含有する成形品を製造、輸入、供給する企業は、2021年1月5日から、EU市場にあるこれら成形品に関する情報をSCIPデータベースに提出する義務が生じます。候補リスト物質を0.1 重量%以上含有する成形品であれば、EU圏内で製造されたもの、およびEU以外の国から輸入されたもの、どちらも対象となるため日本の成形品供給者も、EU圏内の輸入業者の求めに応じ、成形品に含まれる候補リスト物質に関する情報を提供する必要があります。

SCIP通知義務の対象事業者
■ EU圏内の製造業者、組立業者
■ EU圏内の輸入業者
■ EU圏内の成形品の流通業者、成形品を上市するその他サプライチェーン従事者

成形品を直接一般消費者に供給するリテール(小売り業者)やその他のサプライチェーン従事者は、ECHAへ情報を提供する義務はありません。

SCIPデータベースに通知する内容

成形品供給者が通知する必要な情報は下記のとおりです。
1. 成形品が何か:成形品の識別ができる情報 
2. 成形品に含まれる有害物質:成形品に含有される候補リスト物質の名称、濃度範囲、候補リスト物質を含有している成形品の箇所
3. 成形品の使用・廃棄方法:成形品を安全に使用するために必要な情報、廃棄時の適切な管理を確実にする情報

通知に必要なデータや登録方法などは、ECHAのホームページに掲載されていますが、表記が英語で、また情報量が多いので、情報収集に時間と手間がかかります。

SCIP データベースの目的

EUはSCIPの情報を開示することにより、製品や材料の調達から廃棄段階までのライフサイクル全体を通じて、SVHCの利用を最終的に減少させることを目的にしています。また、具体的には下記のような利点があります。

■ 懸念物質を代替:EU 市場における成形品中の懸念物質を代替することをサポートし、有害物質を含有した廃棄物の発生を減少させます。
■ 廃棄物処理を改善するための情報提供:廃棄物事業者は、候補リスト物質を含有する成形品を選別してリサイクルすることが可能です。一般消費者は、情報に基づいて購入品を選択をしたり、成形品の使用方法や廃棄時の最善の方法を知ることができます。
■ 適切なデータベース管理:当局が成形品中の懸念物質の使用をライフサイクル全体にわたり監視します。

今後の展望 ~今から対応が重要~

今後、EUに製品を輸出する際、日本の成形品製造業者も、REACH規則に加え廃棄物枠組み指令に遵法する必要があり、EUと同様の取り組みを余儀なくされることが予測されます。
例えば、EU向けに輸出販売する日本の製造業者や組立業者は、成形品の受入れ検査として、国内の部品や材料のサプライヤに、SVHCやCLSの不使用証明書や非含有証明書の提出を求めることが必要になります。また、納品先が日本国内だけであっても、納品先の最終製品がEUでの販売を見込んでいる場合、上記の証明書等を準備し納品時に提供することになります。
この有害化学物質の管理の流れは、持続可能な社会を実現する上で、EUだけでなく中国やアジア諸国においても模範となる傾向が予測されます。そのため、現在EUを市場として視野に入れていない企業も、有害化学物質管理に注視することが望まれます。

一般消費者にも浸透

廃棄物枠組み指令では、2025年1月1日までに、EU域内の家庭から出る有害廃棄物の分別について収集方法が設定されるため、EUの輸入事業者だけでなく、一般消費者が有害化学物質の情報を要求することが可能となります。
EUでは、一般消費者は自分の購入する製品に対しSVHCがどれくらい入っているか知ること、また、その製品を販売している店舗や製造業者、輸入事業者に直接聞く権利が保証されています。SVHCについて知ることが啓蒙されおり、情報を取得できるウェブサイトやアプリも開発されています。製品を提供する側は、一般消費者から問い合わせがある場合、45日以内に無料で回答することが義務付けられています。

SVHC・CLS非含有証明書のデビデンスとなる分析試験

非含有証明書は自己宣言で作成可能ですが、自社データは裏付け資料として信憑性が低く、取引する納品先からは第三者検査機関のレポート提供を求められることが多くあります。
テュフ ラインランド ジャパンでは、お客様の製品(成形品)に対するSVHC・CLS(209物質、2020年12月現在)の含有分析を実施しています。試験サンプルを受領後、約15営業日でレポートを発行します。一度納品が決まった成形品についても、サイレントチェンジを防止するために、定期的なスポットチェックにも対応します。ドイツの第三者試験・認証機関としてEUで非常に認知度が高いテュフ ラインランドは、知見の集まった世界各国の試験所を有します。テュフ ラインランドの分析レポートを不使用証明書や非含有証明書のエビデンスデータとして、ぜひご活用ください。

 

お問い合わせ:カスタマーサービス(TEL: 045-470-1850 E-Mail: info@jpn.tuv.com

更新日 : 8/23/2021 (last edited & unpublished on April 4, 2023)

Topics: 化学物質, 有害物質規制