昨今、様々な情報の中に“ミリ波”という言葉があり、ニュースなどで聞いたことがあるかと思います。では、ミリ波とは何でしょうか?

ミリ波そのものの特徴を説明し、“これまでのミリ波の用途”と“今後のミリ波の用途”を初心者向けに分かりやすく解説します。
<ミリ波とは?>
波長がミリメートル台の30GHzから300GHzの周波数帯の電波を指し、下記の特徴を持ちます。
メリット
- ミリ波帯域は広い周波数帯域を有し、信号伝送帯域を広くすることが可能なため、高速で大容量の伝送回線を構築できる。
- ミリ波帯は波長が短いため、小型、軽量で指向性の鋭い高利得のアンテナを実現でき、その場合は他回線との与被干渉を軽減できる。
- ミリ波帯は波長が短いので装置構成を小形・軽量にすることができ、装置設置場所の選択の自由度を大きくできる。
- 直進性が強くなり、電波が物の陰に回り込む性質が弱くなる。
- 周波数が高くなると(波長が短くなると)、電波の性質は光に似ている。
- 物体に遮られる性質があり、ミリ波では金属以外の物でも影響を受ける。
- 水や酸素があると、電波が吸収されやすい。
では実際にどのような用途で使われているのでしょうか?
<これまでのミリ波の用途>

昨今では自動車衝突防止機能などが標準装備の車が多く販売されているなか、カメラ単独による衝突防止機能やカメラのミリ波レーダーのそれぞれの特徴を組み合わせたものなど、多くの車にミリ波レーダーは搭載されています。
また、ミリ波は広範囲な周波数帯域割り当てにより、5G NR 携帯電話などにも活用され始めています。
携帯電話以外にも様々なセンシング技術と組みあわせ、瞬時に特定、判定、制御をすることが可能なことから、無人化運転、遠隔医療の実験、工事現場でのトラックの遠隔操作なども実現しています。
ミリ波のメリットである高速・大容量かつ低遅延速度の技術は、膨大なインフラ情報の処理にも役に立ち、Cloud処理、AI技術との組み合わせでさらなる活用方法の実験と開発が進められています。
⁻電波望遠鏡による天文観測 (105GHz~ )

⁻自動車衝突防止レーダー(76GHz,79GHz)
⁻携帯電話5G NR (28GHz)

⁻その他
高速無線LAN WirelessHD, WiGig(60GHz),航空機前方監視用(76GHz)

<今後のさらなるミリ波の用途>
⁻レーダーセンサー

様々なところで使用されている人感センサーでは人間の細かな動きを認識できず、また光源、熱による誤動作を引き起こすなど、日常生活において下記のような人感センサーの誤作動で不便を感じることを誰もが経験しているのではないでしょうか?
- 洗面所の水が誤認識によりなかなか出てこない
- 自動ドアが勝手に動いてしまう
- 勝手にライトが点灯してしまう
この誤動作による無駄な動作、資源を低減し、人間が判別できるような認識能力があれば理想的ではないでしょうか?
また、ステレオカメラやLIDARなど、可視光を利用したセンシング技術がありますが、粉塵、煙、霧、鏡面体、液体、透明体には苦手とされています。
これらを補える技術として、ミリ波技術を活用したレーダーセンサー(移動体検知センサー)という技術が注目を集めています。60GHz パルス変調やFMCWを用いたレーダーセンサーは高精度な距離分解能、高解像度の検出能力、低消費電力かつ、光を通過するガラスなどの障害物検知、液体、鏡面体にも検出可能とされている技術です。
※ LIDAR: light detection and ranging 光による検知と測距
※ FMCW: Frequency Modulated Continuous Wave周波数連続変調
<移動体検知センサーの広がりを見せる活用用途>
• ロボットの自律走行に高精度の障害物検知センサー
• 産業・民生機器
• FA機器の安全センサー
• バイタルセンサー
• 非接触ジェスチャー入力デバイス
• ドローンの衝突監視
• 駐車場占有率の検出
• 廃棄物収集の最適化
• スマートシティ向けのIoT
• 工場や各種労働環境の自動化
• 部品運搬車両(AGV)の自律走行用
• 高精度の進入防止
• 生体情報取得
• スマート家電
• 個人認証
• 自動車室内センシング
• キックセンサー
• ヘルスケア
• 運転支援


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黒澤 大樹(くろさわ だいき) |
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更新日 : 10/14/2022



