近年、低軌道衛星(LEO)を活用した通信サービスが急速に普及しています。
これまでの衛星通信とは異なり、より低い軌道を周回する衛星と通信することで、低遅延かつ広範囲での通信が可能となり、インフラが整備されていない地域や移動体での利用が広がっています。
こうした新しい通信形態の普及に伴い、従来の静止衛星を前提とした制度の見直しが進められています。
日本国内においても、非静止衛星通信に対応するため、電波法施行規則および無線設備規則の改正が行われ、通信方式や機器の特性に応じて柔軟に条件を設定する運用が導入されています。
本ブログでは、この制度改正のポイントと試験方法の変化について整理します。
📡非静止衛星通信への対応で何が変わったのか
今回の制度改正では、非静止衛星と通信する地球局、例えば小規模地球局(VSAT)や携帯移動地球局といった設備が対象として明確化されました。これらの機器は、従来の静止衛星向け設備とは異なり、移動しながら通信する、また複数の衛星と切り替えながら通信するといった特徴を持っています。そのため、従来の固定的な前提に基づく評価ではなく、実際の運用を想定した柔軟な評価が求められています。
さらに、今回の制度改正では、占有周波数帯幅や帯域外領域の不要発射といった重要な技術条件について、あらかじめ一律の値を適用するのではなく、機器ごとに条件を定めるようになりました。
これにより、一律基準から個別評価への対応が進み、より柔軟な運用が可能になる一方で、機器ごとに適切な評価を行う必要があります。こうした制度改正を背景として、非静止衛星向け通信機器の試験方法も新たに整備されました。
📡試験方法はどう変わったのか
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実運用に近い環境での評価
新しい試験では、温湿度に加えて振動などの環境条件を考慮した評価が求められます。これにより、車両や船舶など移動中の利用を想定した環境下での動作安定性を評価できるようになりました。 -
複雑なアンテナ構成への対応
フェーズドアレイアンテナや複数アンテナを用いた構成に対応するため、個別アンテナの測定ではなく、システム全体としての性能評価が必要になります。 -
測定方法の厳密化
占有周波数帯幅や不要発射の測定方法については、周波数帯ごとの条件や評価方法が細かく規定されています。また、制度改正により個別条件での設定も可能となったことで、測定の再現性と結果の信頼性がより重視されるようになっています。 -
実際の通信状態を考慮した試験
試験では、通常の送信状態に加え、以下のような実際の運用を想定した条件での評価が必要となります。
- 送信停止状態
- 複数搬送波の利用状態 -
製品開発におけるポイント
新しい試験方法では、評価項目の増加や測定条件の複雑化により、従来以上に専門的な試験環境が必要となります。
特に以下の点が重要となります。
- 環境試験(温湿度・振動)
- 複数アンテナの総合評価
- 不要発射の精密測定
また、制度上も個別評価への対応が進んだことで、機器ごとに最適な試験条件を整理することが重要になっています。
📡設計段階で考慮すべきポイント
制度や試験要件の変化を踏まえ、設計段階から以下の観点を考慮することが重要です。
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アンテナ方式の選定
LEO衛星は移動速度が速く、短時間で可視衛星が切り替わるため、高精度なトラッキングが求められます。機械式のパラボラアンテナ、電気式の電子走査アレイまたはフェーズドアレイなどの方式を選定することが可能です。特に、高速追尾が求められる用途の場合、電子走査アンテナが有利になる場合があります。 -
設置環境を考慮した機械設計
山間部、上空、海上などの厳しい利用環境を想定し、防水、防塵、耐風、耐塩害、耐振動、耐雷といった観点での設計・対応が求められます。 -
法規制への対応
既にFCC認証やCEマーキングを取得済みの製品であっても、そのまま日本国内で使用可能とは限りません。日本での販売・運用には、電波法に基づく適合確認が必要です。また、「証明規則第2条第1項9号の3」、「証明規則第2条第1項9号の4」、「証明規則第2条第1項28号の2の5」、「証明規則第2条第1項28号の2の6」に該当するKu帯VSAT地球局は、包括免許局の特定無線設備として扱われます。
非静止衛星通信の普及により、無線機器に求められる要件と評価方法は大きく変化しています。従来の一律基準から個別評価への転換が進む中で、試験・評価の重要性は一層高まっています。移動環境や干渉が多い状況においても安定した通信品質が求められることから、製造業者にはより高度な試験対応が求められています。
テュフ ラインランド ジャパンでは、開発状況に応じた評価方法の整理から試験実施までワンストップで対応しています。評価や試験についてご検討の際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
総務省: 通信技術分科会 衛星通信システム委員会作業班(第11回)資料11-3 「OneWebシステム」の検討状況について をもとに作成
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更新日 : 7/7/2026




