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IEC 62368-1 エキスパートインタビュー | 製品評価では「最終的に製品を使うユーザーが安全かどうか」を常に意識

Posted by TUV Rheinland Japan on 2024/11/01 12:33:33
TUV Rheinland Japan

IEC 62368-1は、IT・AV機器の安全に関する国際規格です。2010年に第1版が発行され、2023年5月には第4版が発行されています。

「伝統的な」IT機器とAV機器の境界が曖昧となるなか、IT機器の規格であるIEC 60950-1と、AV機器の規格であるIEC 60065の対象製品を1つの規格に集約した「ハザードベース」の規格となっています。

 

今回は、IT・AV機器の製品安全評価、認証の専門家である、テュフ ラインランド ジャパン 製品事業部 電気製品部 IT/AV製品課 シニアエキスパートエンジニア 村谷 俊英にインタビューしました。村谷は、IT・AV機器、家電製品の評価・認証、エコデザイン規則に基づく評価・認証に加え、工場検査の検査員も務めています。

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― ― ― まずはIEC 62368-1について教えてください。

IEC 62368-1は、IT製品、AV製品と呼ばれる、家庭やオフィスにある私たちの身近な電気製品の安全を評価するための規格です。これらの製品がユーザーに危険なく使える製品設計になっているかについて規格に基づき適合性検査をします。

「ハザードベース」と呼ばれているように、感電や発火など想定される危険源ごとに、規格の要求に従ってセーフガードと呼ばれる安全対策がきちんと設計に盛り込まれているかどうか、正しく機能するかを評価します。

 

時代の流れや技術の進歩のなかで、私たちの身近な製品もより複雑になりました。機能や仕様は多岐に渡ります。製品ベース、ものありきの考え方ではどうしても評価に抜け漏れが出てしまいますが、危険源を特定するハザードベースの考え方は複雑な製品にもうまく当てはめることができると考えています。

 

― ― ― IEC 62368-1の要求事項への適合で、大事なポイントを教えてください。

 

どの規格でもそうですが、まずは規格内容を正しく理解することです。その上で製品の設計段階で危険源を特定し、リスク分析を行い、安全対策を盛り込むことが重要になると考えています。安全設計のコンセプトがしっかりしている製品であれば適合性評価もスムーズに進みます。

 

規格で想定される危険としては、①感電、②火災、③指を挟む・切るなどのケガ、④光・音などの放射によるダメージ、⑤やけど、⑥化学物質によるダメージなどがあります。全て人体に大きな影響を与えかねないものであるため、これらの危険に対するセーフガードを網羅して設計する必要があります。

 

― ― ― お客様がお困りになるのはどのようなポイントでしょうか?

 

IEC 62368-1の内容理解で、製品ベースではなくハザードベースの考え方に戸惑われる方が多くいらっしゃいます。皆さんリスクアセスメントはされていますが、規格にある多くの要求事項を製品に当てはめていくこと、危険源の特定・分析が難しく理解しにくいとお聞きします。また、同じ要求事項でも製品が違えばアプローチが変わることもあります。

 

テュフ ラインランド ジャパンのセミナーでは、規格書の内容解説、そして実例をあげてのワークショップも行っていますので、ご活用いただければと思います。


― ― ― テュフ ラインランド ジャパンの IEC 62368-1の適合性評価、CB証明(※)の強みを教えてください。


テュフ ラインランド ジャパンでは多くのCB証明を発行しており、試験・認証の実績が豊富です。いろいろな製品を見てきていますので、製品に応じた適合性評価、お客様のニーズに応じた対応が可能です。現在、IT・AV機器をメインで担当するエキスパートが14人在籍していますが、定期的に意見交換、トレーニングを行い、それぞれの技術力を共有し知見を深めています。エンジニアによりいろいろな考え方がありますので、製品への適切なアプローチについて議論を重ね、チームとして評価の軸がぶれないようにすることでお客様の信頼にお応えできるようにしています。


常に意識していることは「最終的に製品を使うユーザーが安全かどうか」の視点

― ― ― 製品安全を考えるうえで、村谷さんが大切にしているのはどのようなことでしょうか?

私たちは製品が規格の要求に適合しているかどうかを評価するわけですが、要求内容があいまいといいますか、例えば「感電防止策を設けなさい」というように規格には大枠だけが書かれており具体的なことが書かれていない場合もあります。そのため、私たちエンジニアとしての適合判定(エンジニアリングジャッジメント)が求められることがあります。その際、常に意識していることは「最終的に製品を使うユーザーが安全かどうか」の視点です。使っている時もそうですが、「安全に壊れる」と言うように製品が壊れた時にもユーザーが安全でなくてはなりません。

 

製品を世の中に出す過程で、製品安全は避けては通れないものです。安全評価をする者として、規格のあいまいな部分をそのままにせず、製品安全の考えに則りきちんと判断していく必要があります。「製品の都合」、「安全評価の都合」ではなく、常に公正な「第三者の目」で一歩踏み込んだ評価を心がけています。

 

繰り返しになりますが、ユーザーの安全を一番に考えています。ユーザーが安心して使用できる製品を世に出すために妥協のない評価をし、お客様へフィードバックすること、これこそが我々の第三者認証機関としての試験・認証を信頼してくださるお客様への一番の貢献だと思っています。

 

― ― ― 最後に、これからAV・IT機器のCB証明取得を考えていらっしゃる方へメッセージをお願いします。

IT・AV機器の海外展開を考えるお客様はCB証明取得のためにIEC 62368-1と向き合うことになりますが、壁にぶつかった際にはお客様だけで悩まず、ぜひテュフ ラインランド ジャパンを活用してください。定期的にセミナーも開催していますし、技術相談をお受けすることも可能です。前に進むきっかけをつかむためにも、どんなことでも構いませんのでぜひご相談ください。私たちがお手伝いします。

 

※CB証明:CBスキームは、参加国と認証機関が締結した多国間協定に基づき、電気・電子製品の安全性に関する試験結果および証明書を相互に受け入れるグローバルな枠組みです。現在50ヵ国以上が参加しています。CBテストレポートおよび証明書により、輸出先市場の国内認証マークも迅速に取得することができます。

 

村谷 俊英(むらや としひで)
テュフ ラインランド ジャパン株式会社
製品事業部 電気製品部 IT/AV製品課
シニアエキスパートエンジニア

家電機器メーカーで携帯電話のロジック設計・開発、家庭用燃料電池の設計・開発を担当。2013年9月にテュフ ラインランド ジャパン入社。IT・AV機器、家電製品の評価・認証、省エネルギー評価・認証に従事。2019年より工場検査の検査員も務める。

 

◆セミナーのお知らせ◆
IEC 62368-1: 2023 (第4版): 定義コース、要求コース(横浜、大阪)半日コース、二日間コース

<参考リンク – テュフ ラインランド ジャパン ウェブサイト>

IEC 62368-1:オーディオビデオ機器・情報通信機器の試験・認証

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お問い合わせ:カスタマーサービス(TEL: 045-470-1850 E-Mail: info@jpn.tuv.com

更新日 : 11/1/2024

Topics: 電気安全, tuv.communication, IT機器, エキスパートインタビュー