【連載】安全設計を失敗しないために
テュフ ラインランドは、機能安全技術について40年以上前から研究をはじめ、その成果の多くが現在の規格書に採用されています。この長年の知見をもとに、世界中で数多くの機能安全認証や試験、教育などを実施してきました。
十数年にわたり、認証・評価業務、技術講師、執筆等を務めてきた機能安全認証検査員が、読者の皆さまに「失敗しない安全設計」を実現していただくために、機能安全やサイバーセキュリティの正しい理解や誤解を解くヒントなどをお伝えします。
今から20年ほど前、機能安全の中心となる規格IEC 61508の初版が発行され、EU域内では急速に活用されてきました。しかし、数百ページにもおよぶ膨大な量の内容をどのように理解し実践するか、設計する技術者たちも非常に悩んでいました。そして誤った理解のままで安全コンセプト(設計仕様書)を作成し、それらをレビューする側の認証機関は膨大な量の誤りを指摘しなければならず、非常に非効率な時間を費やしていました。
そこで、テュフ ラインランドは認証評価の前の段階として、設計技術者への教育活動が必要だと考え、十数年前に機能安全のトレーニングを検討しはじめました。しかしながら、当時そのような機能安全の専門的な教育を実施している事例が世界中どこにもなく、社内でも「教育のニーズはそれほど多くはないだろう」という消極的な意見が大半でした。ところが機能安全トレーニングを始めたところ、予想に反し年間を通して非常に多くの受講申し込みがありました。そして、現在も世界中のテュフ ラインランド支社で教育プログラムを提供しています。
テュフ ラインランドが提供する教育プログラムは既に200種類以上もあり、機能安全への関心の高さとニーズが多様であることがわかります。また、テュフ ラインランド独自の資格制度である機能安全エンジニア(FSE)も世界中で認知され、すでに約15,000人以上の有資格者が日々の業務に活用されています。日本でも2006年からこの機能安全エンジニア(FSE)のトレーニングを日本語で提供しており、年々資格者が増え続けています。いくつかの企業ではFSEを奨励資格として会社をあげて取り組まれ、毎年多くの方々がトレーニングに参加されています。トレーニングコース紹介資料
機能安全認証の取得を早めるには、設計者が理解度をあげること
機能安全認証の取得には、設計に関わる技術者自身の技術的理解が非常に重要なのはもちろんですが、それは同時に認証取得への早道でもあります。しかしまれに設計者自身が勉強することを避け、高額なコンサル費用を支払い、外部に設計を丸投げされるケースがあります。この場合、残念ながらほとんどのプロジェクトは長期化するか、悪くすれば途中で崩壊してしまうこともあり、当然それまでの費用と時間が無駄になってしまいます。そして最も不幸なことは、機能安全技術の知識が社内にまったく残らないことです。わたしたちはこれまで世界中で多くの機能安全プロジェクトに関わってきましたが、皆さんが良く言われるのが「安全設計のために取り組んだ結果、安全性だけではなく品質や動作の安定性も大きく向上した」という副次的効果です。企業の使命として出来るだけ短期間で認証を取得したいというのは当然です。そのためには設計者自身が機能安全をしっかり勉強し、正しく理解することが最も早道となることは間違いありません。そして一旦理解されるとその後のプロジェクトが加速度的に早くなるのも事実です。
「急がば回れ」です。機能安全トレーニングを受けることは回り道のように見えますが、実は理解を深めてから認証取得に望む方が最も高い費用対効果を生む結果となります。
執筆:テュフ ラインランド機能安全認証検査員
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≫≫機能安全 IEC 61508についてわかりやすく解説しています。出典:「計測技術」(2016年10月号) 日本工業出版株式会社≪≪
■ 機能安全 IEC 61508 について<要求のポイントと認証プロセス>(1/3)
■ 機能安全 IEC 61508 について<要求のポイントと認証プロセス>(2/3)
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更新日 : 10/26/2021