tuv-jp-blog-banner

ECHONET Lite /AIFエキスパートインタビュー:創・蓄・省エネが可能な日本型スマートハウスを世界へ

Posted by TUV Rheinland Japan on 2021/03/15 8:37:28
TUV Rheinland Japan

スマートハウス、スマートコミュニティを支える通信規格、ECHONET Lite(エコーネットライト) 。IoT家電、住宅設備、創・畜エネ設備など、既に100種類以上の機器がECHONET Lite規格に対応しています。メーカーが違う製品でも、ECHONET Liteで相互接続されることで、製品の自動制御、遠隔操作、エネルギー管理などが可能になります。

今回は、ECHONET Lite / AIFの専門家である、テュフ ラインランド ジャパン 製品事業部 電気製品部 Wireless/IoT課 シニアプロジェクトエンジニア 武部 泰行にインタビューしました。

武部は、2020年6月に発行された「家庭用エアコン・HEMSコントローラ間アプリケーションインタフェース(AIF)仕様」の国際規格、「ISO/IEC 14543-4-301」の国際標準化に対する貢献が認められ、情報処理学会・情報規格調査会より「国際規格開発賞」を受賞しています。

TUV-Rheinland-20210315-expert1-Image

― ― ― まずはスマートハウス、HEMS(ヘムス)について教えてください。

武部
「スマートハウス」はここ数年よく耳にする言葉ですが、実はなかなか定義が難しい言葉です。

IoTによるホームオートメーション技術を活用し、スマートスピーカーなどと併せて安心、安全で快適な暮らしを実現した住宅を、一般的に「スマートホーム」と呼びます。一方、スマートハウスは、蓄電池、太陽光発電などの設備を装備することで、創・蓄・省エネを可能とした住宅を指します。スマートハウスには蓄電池、太陽光、家電などを一元的に管理するシステムが必要で、これをHome Energy Management System 、略してHEMS(ヘムス)と呼びます

― ― ― ECHONET Liteはどのような規格ですか。

武部
ECHONET Liteは、一般社団法人エコーネットコンソーシアムにより2012年に公開された、家電間の通信規格です。通信規格としては珍しく、日本人によって作られた日本発の規格ですが、IECなどから国際標準規格としても発行されており、国際的にも認められた通信規格です。ECHONET Liteを使用することで、異なるメーカーの家電同士が情報交換、情報設定を行うことができます。

― ― ― ECHONET Liteは、現在どの程度、活用されていますか。また、日本以外の国ではどうでしょうか。

武部
日本国内ではかなり多く使われています。二つの事例をご紹介します。

一つ目はスマート電力量メーターです。現在各電力会社により家庭用電力量メーターの置き換えが進んでいます。円盤がグルグル回る旧式の電力量メーターから、デジタル式のスマート電力量メーターへの置き換えが、日本全国で2024年までに完了する予定です。既にスマート電力量メーターに置き換わったご家庭も多いかと思いますが、このスマート電力量メーターは、全てECHONET Liteに対応しています。そしてECHONET Liteに対応した情報収集機器を使用すれば、リアルタイムの消費電力量やその履歴をスマート電力量メーターから読み出すことができます。このような情報収集機器は大手ECサイトなどでも売っています。「リアルタイムで電気消費量がわかるので省エネ意識が上がって電気代が下がり、数ヵ月で機器購入代金の元が取れた」というコメントもありましたよ。

二つ目はスマートハウスです。スマートハウスでは蓄電池、太陽光、家電などを一元的に管理するHEMSというシステムが必要だと先ほどお話ししましたが、このHEMSと蓄電池、太陽光、家電が通信する際に使用されているのがECHONET Liteです。ECHONET Liteを使用することで、スマートハウス内で異なるメーカーの機器を使用することが可能となります。HEMSと蓄電池、太陽光、家電を同じメーカーで揃える必要がないので重宝されています。

日本国外の使用状況はまだまだです。創・蓄・省エネを宅内で完結させる日本型スマートハウスは、国外ではその概念自体がまだあまり浸透していません。ECHONET Liteは国際標準規格として認められていますので、日本型スマートハウスの概念が国外に浸透していけば、ECHONET Liteも一緒に広まっていくものと考えています。

TUV-Rheinland-20210315-expert2-Image


― ― ― AIFについても教えてください。


武部
エコーネットコンソーシアムは、ECHONET Liteのほかに、AIFという通信規格も策定しています。ECHONET Liteはエアコン、蓄電池などを含んだ全ての機器に共通の規格として策定されており、全ての機器が基本的に同一の認証試験を行います。一方、各機器がこのECHONET Liteをどのように使用するかを、具体的なユースケースとともに規定したのがAIF仕様です。AIF仕様はエアコン、蓄電池などの各機器ごとに策定されており、認証試験では各機器独自の試験を行うことになります。

― ― ― ECHONET Lite /AIFの認証取得には、どのような手順が必要でしょうか。

武部
ECHONET LiteとAIFそれぞれに認証取得が必要です。AIF認証取得のための前提条件としてECHONET Lite認証の取得が必要です。そして、ECHONET LiteとAIFのそれぞれに「認証試験」と「認証」の手続きが存在します。

ECHONET Liteの認証試験は、基本的に「自己試験による認証」の手続きです。申請者がエコーネットコンソーシアムのホームページから認証試験仕様書をダウンロードし、自身で認証試験を実施してその結果を認証機関へ提出します。一方ECHONET Liteの一部機器とAIFは、「認定試験機関における第三者試験」が必要です。当社をはじめとするエコーネットコンソーシアム認定の試験機関に、機器を持ち込んで認証試験を実施します。

「認証」の手続きは、当社をはじめとするエコーネットコンソーシアム認定の認証機関で行われます。「自己試験による認証」の場合は、申請者は自己試験結果と認証申請書を認証機関に提出し、審査を受けます。「認定試験機関における第三者試験」の場合は、当社をはじめ多くの試験機関が認証機関としての認定も併せて受けていますので、認証審査手続きは認証試験と同時に進むことになります。

TUV-Rheinland-20210315-expert3-Image-3

認証試験で使用するテストツールは、エコーネットコンソーシアムが会員向けに無償で公開しています。申請者がご自身の環境で事前試験を実施できますので、ぜひ事前試験を実施したうえで認証試験に臨んでいただきたいです。事前試験が可能なためか、ECHONET Lite/AIFの認証試験のFail率は、当社で実施している他の規格の認証試験よりも低いように感じます。

― ― ― テュフ ラインランド ジャパンは、エコーネットコンソーシアムより、ECHONET Lite /AIF試験・認証機関として認定を受けています。提供するサービスについて教えてください。

武部
テュフ ラインランド ジャパンは、全ての機器種別の認証・認証試験を実施することが可能です。

業界トップクラスの経験を持つ認証員、試験員が、スケジュール、試験・審査の進め方など、申請者の要求に可能な限り柔軟に対応し、確実な認証試験、審査を行います。仮に試験でFailとなった場合でも、その場で解析を行い、Failとなった理由を申請者に納得していただくように心がけています。豊富な経験と、それに裏付けされる知識の厚さが強みです。

また、テュフ ラインランド ジャパンは、Wi-SUNアライアンス、G3-PLCアライアンスから指定された試験機関でもあります。日本の家庭向け低圧スマート電力量メーターの下位通信メディアは、Wi-SUNまたはG3-PLCであり、AIF認証試験もこれらの通信メディアを使用して行われます。当社はWi-SUNとG3-PLCの知見も多くありますので、これらのメディアに起因する問題が発生した場合も、自信を持って対応します。

― ― ― 「えねっとくん」も紹介してください。

武部
えねっとくんはテュフ ラインランド ジャパンで取り扱っているECHONET Liteテストツールです。WindowsPCにインストールして使うアプリベースのツールです。

えねっとくんには、疑似的なHEMSコントローラの役割となる機能、逆にえねっとくんが疑似的なECHONET Liteデバイスになる機能、自己試験となっているECHONET Lite認証試験のお手伝いをする機能、異常系・繰り返し試験の機能があります。オールインワンのテストツールで、これ一つあればECHONET Liteのほとんどの試験を行うことが可能です。

ユーザーインターフェースのわかりやすさを重視して作られたツールで、ECHONET Liteの知識があまりないテストエンジニアの方でも、簡単に使用することができます。長年多くの方に使っていただいており、自信を持ってお勧めできるツールです。

デモ動画がYoutubeに上がっていますので、ぜひご覧ください。また、エコーネットコンソーシアムのYoutube動画にも私がこっそり出てきますので、よろしければ探してみてください。

― ― ― 最後に、「家庭用エアコン・HEMSコントローラ間アプリケーションインタフェース(AIF)仕様」の国際規格、「ISO/IEC 14543-4-301」の国際標準化活動は、どのようなものでしたか。また、今後の国際標準化の動きも教えてください。

武部
国際標準規格は、国際標準化団体に属する委員会で審議され、複数回の国際投票を経て発行されます。私はISO/IEC JTC 1/SC 25/WG 1という委員会で、ISO/IEC 14543-4-301のプロジェクトエディタを務めました。国際会議に複数回出席し、草案の作成、各国代表への説明、コメントの取りまとめ、質疑応答などを行いました。

通常は定期的に世界のどこかの都市に集まって会議を行いますが、2020年の会議は感染症の影響で全てオンラインになってしまいました。日本時間23時からという、アジアに優しくない時間設定で体力的に大変でしたが、それよりも各国委員との立ち話による調整が出来なかったことが痛手でした。無事に発行できてよかったです。

今後「蓄電池・HEMSコントローラ間アプリケーションインタフェース(AIF)仕様」の国際標準化活動を行う予定で、私が引き続きプロジェクトエディタを務める予定です。

武部 泰行
テュフ ラインランド ジャパン
製品事業部 電気製品部
Wireless/IoT課
シニアプロジェクトエンジニア

2013年よりECHONET Liteの認証員としての活動を開始し、2016年より現職。エコーネットコンソーシアムでは、相互接続WG副主査、プラグフェスト運営担当、規格認証WG委員、国際標準化WG委員などを務める。2018年よりISO/IEC JTC 1/SC 25/WG 1 のエキスパートとして活動。ISO/IEC 14543-4-301のプロジェクトエディタとして国際規格発行への貢献を評価され、2020年に情報処理学会・情報規格調査会より「国際規格開発賞」を受賞。

<参考リンク – エコーネットコンソーシアム ウェブサイト>
国際標準化WG 武部委員が、情報処理学会・情報規格調査会より「国際規格開発賞」を受賞されました

<参考リンク – テュフ ラインランド ジャパン ウェブサイト>
ECHONET Lite AIF仕様の国際規格発行 - テュフ ラインランド ジャパン 武部 泰行が「国際規格開発賞」受賞 (家庭用エアコン・HEMSコントローラ間:ISO/IEC 14543-4-301)

ECHONET Lite/AIF認証・ 試験サービス

スマートグリッド製品試験

ECHONET Liteテストツール「えねっとくん」(テュフ ラインランド ジャパン 公式ブログへのリンク)

 

<シリーズ> エキスパートインタビューはこちら


お問い合わせ:カスタマーサービス(TEL: 045-470-1850 E-Mail: info@jpn.tuv.com

更新日 : 3/30/2021

Topics: エコーネット機器認証, IoT, スマートハウス, 通信機器, tuv.communication, 無線, IT機器, エキスパートインタビュー