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2015年9月に公表された当戦略では、サイバー空間は我々の生活や社会とは切っても切れぬ基盤であり、「無限の価値を生むフロンティア」として肯定的に捉えています。その一方、我々を取り巻くあらゆるモノがネットワーク化され、深く融合されていくこの現状を踏まえ、サイバー攻撃が社会に与える影響や脅威についても認識し、対策を取ることの必要性を明示しています
特に2020年のオリンピック・パラリンピック東京大会のような、世界の耳目を集める国際行事を成功させるためには、サイバーセキュリティ対策に万全を期す必要があります。当戦略では以下の三つの具体的な施策を掲げ、今後数年間の官民および関係省庁の活動の指針としています。
1) 経済社会の活力の向上および継続的発展
セキュリティ対策は「費用」ではなく、企業価値や国際競争力を高める「投資」であるという観点から、「安全なIoTシステムと新産業の創出」、「セキュリティマインドを持った企業経営の推進」、「セキュリティにかかわるビジネス環境の整備」が掲げられています。
2) 国民が安全で安心して暮らせる社会の実現
オリンピック・パラリンピック東京大会が行われる2020年、ならびにそれ以降の社会を見据え、サイバーセキュリティにかかわる事業者の取り組みの推進、普及啓発、サイバー犯罪への対策など「国民・社会を守るための取り組み」、電気、上下水道、ガス、交通機関などの「重要インフラを守るための取り組み」、政府機関の防御力の強化を目指す「政府機関を守るための取り組み」が掲げられています。
3) 国際社会の平和・安定および我が国の安全保障
サイバー空間における「我が国の安全の確保」、国際的な法の支配を推進し、国家間の信頼を醸成するための「国際社会の平和・安定」、それを実現するための「世界各国との協力・提携」が目標として掲げられています。
このように、「経済社会」、「国民にかかわる生活空間」ならびに「国際社会と国家の安全保障」という、さまざまな社会階層において、今後の取組の方針が戦略的にうたわれています。
特に経済社会においては、IoT機器の普及とそれに伴う脅威への対策が取り上げられています。実際の社会問題として、既にWebカメラやルーターなどの脆弱性を悪用した大規模なボットネットが形成され、昨今の大規模なサービス拒否(DoS)攻撃に利用されるなど、そのセキュリティ対策については社会全体で取り組まなければならない課題となっています。全てのデバイスがネットワークにつながる社会を迎えている今、機器の企画設計時の段階からセキュリティを考慮に入れた「セキュリティ・バイ・デザイン」の理念の浸透、ならびに安全なIoT機器が市場に供給されるためのガイドラインや基準の整備が急務といえます。
企業においては、従来どおりのサイバーセキュリティ確保の取り組みを続けることはもちろん、経営層の意識として、企業として、製品、サービス、組織運営におけるサイバーセキュリティ対策は「費用」ではなく、製品やサービスへの付加価値や企業の競争力を高める「投資」であるという認識を高めていくことが重要となります。
そのために、政府としてはサイバーセキュリティに積極的に取り組んでいる企業の正当な評価、財政面で有利となる仕組みの構築と実施、サイバーセキュリティにかかわる人材の育成の推進が行われていきます。
サイバーセキュリティ関連産業を成長産業と捉え、国内外で活躍できる企業やベンチャー企業の育成、政府系ファンドを活用したこの分野への大規模かつ集中的な投資、中小企業においてはクラウドサービスの安全な活用の推進などが行われる予定です。
-続く-
Japan Industry News 2017年1月掲載記事の日本語訳です。