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なぜ製造業者はCEマークをいつわるのか

Posted by TUV Rheinland Japan on 2016/06/07 10:30:00
TUV Rheinland Japan

<Tuv Rheinland APAC blog "Why Manufacturers Lie About CE Marking"の翻訳です>

欧州連合加盟国では「CEマーク」は必ず販売製品に付けるよう法律で定められています。しかし、アメリカとカナダのOSHAや検査員は事情がちがいます。CEマークが付いた電気製品の最もわかりやすい見分け方は、銘板上あるいは近くにあるマークを確認することです。このマークは著作権の対象外ですので、誰でも使用することが可能です。CE1.png

製品にマークがある場合は、CE適合宣言書(DOC)も必要です。CE適合宣言書は通常1ページの文書で、製品と評価に使用する規格について、説明しています。多くの場合、EMC(電磁両立性)のみを対象としており、電気安全規格には言及していません。試験所で使用する機器などの電気製品は、試験報告の作成のために使用する安全規格としてEN61010-1を参照しています。試験報告書は、CE技術構造ファイルに含まれます。宣言書には製造業者の法的権限を有する従業員が署名する必要があり、事象あるいは負傷者が発生した場合はEU法の下この人物が責任を負います。この文書は、製品と共にあるいはマニュアルに入れて出荷される場合もあります。しかしもしこの文書の記載に虚偽の内容があった場合はどうなるのでしょうか。

たぶん信用できる組織だから。
しかしなぜそう言えるのでしょうか?

適合宣言書は、試験報告書、使用構成部品の詳細、その他の情報を含む技術構造ファイルがあることを暗黙に保証するものです。試験報告書は現場評価プロジェクトの過程で役立つものの、逆に多くの疑問が残ることがあります。適切な試験所あるいは適格な製品安全技術者によって実施されたのでしょうか?製品は評価・試験時と同じ状態でしょうか?

当社は、現場評価プロジェクトの過程でよく試験報告書を要求しますが、提示されないことがあります。このような場合、疑問がおこります。そもそも評価と試験を実施したのでしょうか?では、なぜ製造業者は法的拘束力のある文書を偽造することがあるのでしょう?それは、例えばさまざまな報告書に対して、宣言書に署名する人物は、何に署名しているか理解しているのでしょうか?必要なファイルに何が書かれているか理解しているのでしょうか?理解したとして、宣言書に署名したでしょうか?このようなことが疑問視されるわけです。

危険を冒す理由。なぜ偽るのか?

実際の試験報告書を要求するEU当局が少ない。

ほとんどの場合、欧州連合の買い手と港湾当局はうわべだけを見て額面通りにCEマークを認めます。適合宣言書については調べたかもしれません。しかしこの文書の情報を正しく解釈しているのでしょうか?おそらく、製造業者が法的責任を認めるのだから、さらなる疑問を投げかける必要がないということが多いのではないでしょうか。

専門の規制当局職員あるいは研修の不足。

実際、多くの製造業者が自社製品の設計を行いません。設計者は要求されるものを提供するのみです。すなわち必要な機能を果たす製品を提供することで終わります。製品設計者がいる製造業者もありますが、必ずしもすべての製品設計者が製品の安全規格に関する知識があるわけではないので、安全性は後回しにされます。

試験機器と試験施設の不足。

ほとんどの製造業者が、適用規格の順守を検証するために必要な製品安全試験所と機器を備えていません。多くの製品規格で、誘電試験、環境供試条件、可燃性試験、漏れ電流試験などが要求されます。試験報告書があったとして、全試験が実際に行われたのでしょうか?

急いで市場へ - 規制適合のための予算は計上せず。

製品開発者、ベンチャー企業、財務アナリストは、設計、試作、製造の予算と日程を作成しますが、多くの場合製品規制の存在を見落としがちです。そして製品がすでに完成後、誰かが国家規格あるいは国際規格への適合の必要性を悟るのです。時すでに遅し、かもしれません。でも、製品の上市延期や再設計は許されません。この最終段階で、試験所での不合格や上市スケジュールの遅れなどはあり得ないこととなります。誰もそんなリスクを犯すことはできないのです。

このような、不正な「CEマーク」製品は世界中から集まっていますが、その中に製品安全規格に応じた設計では長い歴史を持つ西欧も含まれます。なぜでしょうか?市場監視がないと手抜きする製造業者がいるからです。これは実際に安全な製品の設計・生産方法を知る、多くの責任ある製造業者を困らせています。

CEマークは北米で有効ではありませんが、電気検査員、機器の買い手、病院の多くが、安全認証の証としてCEマークを受け入れることが求められています。しかし、簡単に騙されてはいけません – これは製品認証ではないのです。責任ある製造会社が製品を認証する場合、試験所は定期的に抜き打ち検査を実施します。時には、正規NRTLマークを貼付する権利が停止あるいは取り消されることがあります。場合によっては製品を回収することもあります。アメリカでは、OSHAと電気検査員がテュフ ラインランドのような国家認定試験所に依頼して、正しい評価と試験が実施されていることを確認します。

CEマークに関しては、その法的権限は欧州連合にあります。CEマーク付きの製品がEUの要求事項を満たしていない疑いがある場合あるいは事象が発生した場合は、罰金、製品の隔離、ブラックリスト化、さらには懲役刑となる可能性があります。

問題を防ぐ方法

製品設計者と製造業者は、製品規制プロセスを早期に開始する必要があります。これは経験ある製品安全技術者の雇用を意味する場合もあります。その際は、製品評価と試験の専門家も含めるべきです。正しく計画・準備することで、製品の安全承認プロセスが正しく行われ、法的責任を軽減します。不完全で虚偽の文書は一切必要ありませんし、認められません。そのような文書は正当な競争を害し、我々の家族や友人を生命の危機にさらします。イノベーションは非常に大切です。無責任な製造業者が産業の足かせにならないようにしましょう。弊社のような製品安全の専門家がいつでもお手伝いいたします。

Topics: CEマーキング