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耐震・防火からエネルギー性能評価へ
日本の季節の特徴である四季が二季化しているのではないかと実感される昨今ですが、世界的にも京都議定書以降、気候変動につながるエネルギーの無駄遣いの是正に目が向けられ、化石エネルギー抑制の流れが加速しています。
日本の建築規制当局の方向性としても、従来の耐震、防火性能中心の規制からエネルギー性能評価規制が新たな柱として動き出し、規制領域の拡大が図られています。
さまざまな産業界で、使用されるエネルギーの抑制が計画されて
いますが、住宅、建築物で消費されるエネルギー(業務部門+家庭部門)もかなりの比重を占めます。
出典:資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」【第212-2-1】最終エネルギー消費の構成比(2011年度)
規制当局の規制導入のステップとして、まず、緩やかなガイドライン(努力義務)の設定、適合遵守状況の届出の義務化、最終的な基準適合の義務化といった流れが一般的ですが、建物の省エネ規制については、最終段階として、基準適合の義務化(適合を証明しない場合建築不許可)が一部2017年から施行され、2020年の完全義務化が計画されています。1979年に導入された省エネ法ですが、2017年をもって、防火規制、耐震規制と同格の強い遵守義務として建築物に適用されることとなります。
日本の省エネ規制
今回施行される省エネ規制は大きく2つの基準から構成されます。一つは、建物の外皮(床、壁、屋根、窓など)についての断熱・気密性能基準、もう一つは、建物で消費される一次エネルギー量(暖冷房、給湯、照明などで消費されるエネルギー総量)の基準です。
室内を暖めるにしても冷やすにしても、建物の機密性・断熱性を良くすることにより暖めるエネルギー・冷やすエネルギーを効率良く使う、ということと、入力されるエネルギー自体を減らすべく、使用される暖冷房機器、照明機器などの省エネ性能を継続的に向上しようというもくろみです。
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これらの規制強化に伴う影響範囲として、まず、建物オーナー(事務所、工場、住居、集合住宅デベロッパー)にとっては相応の省エネ対応負担が課せられることになります。しかし、省エネ対応は将来的な建物のランニングコストを減らす側面もあり、きちんとした性能の建物を計画する場合、長期的な負担低減を図ることができる可能性があります。
すでに、住宅デベロッパーについては、ZEH(ゼッチ-Zero Energy House)の概念、要求が一般化しつつあります。また、欧米企業が日本国内で建物を借りる、または調達する場合に米国LEED・英国BREEAM・ドイツGSBC・日本ではCASBEEなどのより高い建築環境省エネ基準への適合を求めるケースも一般化しつつありますので、国内環境法遵守は最低限のレベルでの対応という意味があります。
省エネ規制が産業に及ぼす影響とは
断熱・気密性能基準の強化は関連する建材メーカー、断熱材、屋根材、ガラス、窓などの製造メーカーの製品仕様に及ぼす影響が考えられます。先進的な欧米建材メーカーが日本市場に参入してくる場合もあるでしょう。また、一次エネルギー量の基準は、暖冷房機器メーカー、照明機器メーカーなどの製品について、省エネルギー性能強化をさらに促すことになるでしょう。HEMS(Home Energy Management System)、BEMS(Building Energy Management System)など建物内のエネルギー使用を最適化するシステムの開発も注目されます。
また、直接建築に関わる産業以外でも、例えば、ソーラーパネル発電の建築物への導入、その余剰電力を自動車メーカーと電力会社のコラボレーションで電気自動車に蓄えてみる試み、発電所にもなりうる住宅・建築物間をスマートグリッドで連携して調整する試みなど、住宅・建築物を媒介とした種々の省エネルギーの新しいアイデアが産業界をリードしつつあります。太陽光発電パネル自体を屋根材化する、太陽光発電の直流電力をそのまま建物で消費するなどのアイデアも最新の興味深い取り組みです。欧米の建築・住宅に関わる省エネ基準からは周回遅れに見える日本ですが、これからの改善と規制強化は早いペースで進むものと考えられます。
Japan Industry News 2017年8月掲載記事の日本語訳です。