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1998年当時の世界の労働災害発生状況比較
国名 |
被雇用者数(x106) |
死亡者数 |
10万人率 |
休業 |
アメリカ |
131 |
6,821 |
5.2 |
5,205 |
ドイツ |
36 |
1,287 |
2.2 |
982 |
イギリス |
27 |
225 |
0.8 |
171 |
インド |
420 |
48,176 |
11.5 |
36,765 |
中国 |
700 |
73,6
15 |
10.5 |
56,179 |
ロシア |
64 |
6,974 |
11.0 |
5,322 |
日本 |
65 |
2,077 |
3.2 |
1,585 |
1998年Safety Science誌より
英国のBS8800は、国際的コンソーシアムによってOHSAS 18001(Occupational health and safety management systems-Specifications)として1999年4月に国際規格として発行されました。現在は、改訂されOHSAS18001:2007が正式版となっています。
マネジメントシステム採用により労働災害件数が減少
労働安全衛生マネジメントシステムを導入することにより、2005年には日本における労働災害による死亡者数が、年1,514人まで減少しました。更に2006年には「労働安全衛生マネジメントシステムに関する指針」が改訂されリスクアセスメントが強化されています。リスクアセスメントの実施は、OHSAS18001の要求事項であり、国の機関である厚生労働省、国土交通省はOHSAS18001の組織への導入を推奨しています。
具体的に2005年度のデータを見てみると、引き続きイギリスと日本では死亡災害の発生率に大きな差があります。これはイギリスのサッチャー政権時のBS8800(OHSAS18001の母体)の準強制的な適用の成果と思われます。
日本とイギリスの労働災害の比較(2005年度)
|
調査年 |
雇用者数 |
労災件数 |
内、死亡者数 |
被災者/雇用者数x1000 |
死亡者数/雇用者数x10万 |
被災者数欄の説明 |
日本 |
2005 |
64,000,000 |
551,663 |
1,514 |
8.6 |
2.3 |
通勤災害を除く。被災者数は業務災害で医療にかかった者の数 |
イギリス |
2005 |
29,600,000 |
328,000 |
212 |
11.08 |
0.58 |
自営業者の死亡者数51は含まず、自営業者の負傷者数1143含まず |
日本における具体的な労働災害や重大事故の発生件数については、厚生労働省の発表による労働災害発生状況の推移で参照することができます。日本全体としての労働災害の報告件数にもとづく死傷者数・死亡者数は、労働安全衛生法制定以降、現在まで継続して下降傾向にありますが、重大事故の発生件数は、変動を繰り返し、大きな流れとして増加傾向にあります。
出典:厚生労働省ホームページ
http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11302000-Roudoukijunkyokuanzeneiseibu-Anzenka/0000083922.pdf
ISO 45001の発行と概要
労働安全の国際規格はこれまでOHSAS 18001でしたが、現在ISO 45001が策定され、すでに委員会案が発行されています。2016年1月に国際規格案、7月には最終国際規格案が発行され、本年年末にはISO 45001:2016として正式発行が予定されています。
この規格が発行されたのちもOHSAS 18001は当面有効ですが、今後はISO 45001への切り替えが進んでいくものと考えられます。
労働安全衛生マネジメントシステム導入の効果
労働安全衛生マネジメントを導入する目的は、事故の防止であることは当然です。さらにうまく運用すれば、経営面、費用面にも大きな効果が期待できます。
- 重大災害発生による多額のコスト対策が可能になります(最近は死亡災害1件で裁判費用、民事保障も含めて、約3億円)
- 重大災害が発生した場合は、労働基準監督署による“作業の全部又は一部の使用停止命令(法98条)”が出されます。このような行政執行による事業の中断・ひいては営業損益がでるリスクの執行のリスクが軽減できます
- 労働安全マネジメントシステムを導入することは、単に労働現場の安全を確保するというだけでなく、安全レベルの継続的改善を図ることができ、品質、生産性 (コスト) も副次的に改善が期待できます。
現在政府は平成25年~30年に向けた第12次労働災害防止計画を実施しています。これは、国の安全施策の柱であり、OHSMSの導入が盛り込まれています。この施策では、重大事故に対する経営者への処罰が厳しくなっており、重大災害発生時、経営者が裁判で安全配慮義務違反に問われることもありえます。このようなリスクを低減させるためにもマネジメントシステム導入が有効といえます。
-続く-
Japan Industry News 2016年2月掲載記事の日本語訳です。
労働災害に対する日本の規制対応とは(1)